一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2021年10月 運動をしよう

ひがしきわ整形外科クリニック
藤井 謙三

 人生100年時代と言われている昨今、団塊の世代が75歳以上になる2025年問題に対しては介護の必要のない健康寿命をなるべく延ばすことが必要であると言われています。そのためには運動が必要でロコモティブシンドローム、フレイルという言葉を使いながら啓蒙活動が行われて来ました。しかし約2年前の新型コロナウイルスの発生以来、ステイホーム、ソーシャルディスタンスなどの自粛生活を余儀なくされ高齢者や成人の運動量の低下が報告されて来ています。マラソン大会や職場でのレクリエーションなどのスポーツイベントは中止され、旅行に行って歩くことも制限されています。テレワークが推奨され通勤で歩くことが少なくなった人や、ネットショッピング、デリバリーを使い買い物で歩くことが少なくなった人もいると思います。おそらく運動の習慣が減った、体重が増えた、体力が落ちたという人は相当数いるのではないでしょうか。現時点ではワクチン接種が進み高齢者の感染者数は減少していますが基礎疾患のない40歳代、50歳代の人の重症化が報告されて来ています。その中には肥満の人が多く糖尿病、高血圧症などの生活習慣病予備軍の可能性が高かったのではないかと言われています。米国でも平均年齢47歳の調査で運動不足群は死亡リスクが2.5倍以上だったと報告されています。またワクチン接種後でも感染するブレイクスルー感染や抗体価の低下、次々と出現する変異株のことを考えるとゼロコロナは難しいとWHOが見解を示しています。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身会長もコロナの収束まで2~3年はかかると述べています。今、私たちに出来ることは2025年問題に対してもコロナに対しても運動をすることです。

 一旦筋力が落ちると元に戻すのに何倍もの努力が必要になります。長期間休むと精神的にも再開しにくくなります。運動不足だと思う人はコロナ対策を考えながら運動をしましょう。幸い宇部市は瀬戸内に面し温暖な気候です。自宅の周りでも密にならずにウォーキング出来る場所が多いでしょう。市内中央には常盤公園、少し足を延ばせば阿知須の山口きらら博記念公園、山陽小野田市の江汐公園などもあります。今までの1日30分、週に5回は歩こうというスタンスではなく、気象情報と同じようにコロナの流行状況を見ながら緩急を付けて行うことも必要になってきます。
 宇部市は山口大学附属病院を初め人口に対して多くの病院や開業医があり高齢者ワクチン接種も全国トップクラスで進みました。このように環境もよく医療も充実し、ある程度都市機能が発達していることが2020年度住みたい田舎町ランキング全国1位になった理由だと思います。コロナ禍でも生活しやすい街に住んでいるのですから運動をして健康的な生活スタイルを取り戻していきましょう。