知っておきたい病気
2016年9月 緑内障 気づかないうちに視野狭窄 早期診断・早期治療で視野を守る
宇部市医師会眼科医会
緑内障と白内障のちがい
「見える」ということには、小さいものまで見えるという「しりょく視力」だけでなく、上下左右からの光や形を感じるという「しや視野」という要素があります。緑内障は白内障と一字違いですが、まったく別の病気です。白内障は目の中のレンズ「すいしょうたい水晶体」が濁って視力が下がる病気ですが、緑内障は視野が欠けていく病気です。緑内障に気づかずに治療しないで視野が欠けていくと、ついには視力が下がり、失明につながる恐れがあります。実際に緑内障は日本での失明原因の第一位です。
緑内障の頻度と症状
40歳以上の20人にひとりが緑内障を患っていると言われていますが、そのうちで眼科に通院されている患者さんは2割ぐらいで、8割は緑内障に気づかず、眼科を受診されていません。ほとんどの緑内障では視野が周りからゆっくりと欠けていき、目が痛い、目が赤いなどの症状もないため、視野がとても狭くなるまで気づきません。しかも、片方の目の視野が一部欠けても、もう片方の目で補ってしまうため、両目で見ると視野の異常に気づきません。また、目は絶えず見たいものを追って動いているうえに、欠けた部分が黒く見えるわけではなく、あたかもそこにものが存在しないかのように脳で処理されることも、緑内障に気づかない理由です。
緑内障の原因と種類
緑内障の原因のすべては解っていませんが、目の中の圧力「眼圧」(がんあつ)が大きく関係します。目の中から眼圧によって目と脳をつなぐ神経の付け根「視神経乳頭」(ししんけいにゅうとう)が圧迫されて障害されると、目で感じた光や形の信号が部分的に脳に伝わらなくなり、その部分に一致した視野が欠けていきます。眼圧は目の中を流れている水「房水」(ぼうすい)が目の中で作られる量と目から外へ流れ出る量のバランスで決まります。緑内障は、その房水の目の外への出口「隅角」(ぐうかく)の形によって「開放隅角緑内障」(かいほうぐうかくりょくないしょう)と「閉塞隅角緑内障」(へいそくぐうかくりょくないしょう)の2つのタイプに分類されます。約9割の患者さんは隅角が広く開いている開放隅角緑内障で、眼圧はあまり高くなりません。開放隅角緑内障のほとんどは、眼圧が緑内障ではない人とほぼ同じで高くない「正常眼圧緑内障」(せいじょうがんあつりょくないしょう)というタイプです。一方で、閉塞隅角緑内障は隅角が狭く、徐々に隅角が閉塞して房水が目の外へ流れ出なくなり、高い眼圧になります。まれに急に眼圧が高くなる「急性緑内障発作」(きゅうせいりょくないしょうほっさ)を来し、目の痛みや視力の低下を生じ、強い頭痛も引き起こします。
緑内障の治療
緑内障の治療は、視神経乳頭に負担をかけている眼圧を下げて緑内障が進むスピードを遅くして視野を守ります。眼圧が高くない正常眼圧緑内障でも治療でさらに眼圧を下げると緑内障が進むスピードが遅くなると言われています。開放隅角緑内障では、まずは眼圧を下げる効果を持つ目薬をさします。目薬を毎日さして定期的に眼科で検査して眼圧が下がっているかを確認します。時には視野検査を行い、眼圧が下がることによって視野が欠けるスピードが遅くなったかを確認します。閉塞隅角緑内障では、隅角を広げて房水を流れやすくして眼圧を下げるために、レーザー治療を行います。白内障手術も同様に隅角を広げて眼圧を下げる効果があると言われています。
視野を守るために
緑内障は糖尿病などの生活習慣病ではないので、日常生活の工夫で直接眼圧を下げたり、視神経乳頭を守ったりすることはできないと言われています。しかしながら、老化を早める糖尿病や高血圧、喫煙などは緑内障に間接的に悪い影響があるので、体をより健康な状態に保つことが緑内障の進行予防にもつながります。残念ながら、欠けてしまった視野はもとに戻すことができないので、失明を防ぐには早期診断、早期治療が第一です。緑内障の初期には自覚症状がないので、気になる方は最寄りの眼科を受診して、検査や診察を受けることがとても大切です。緑内障と診断されても、視野が欠けているという自覚症状が少なく、血圧と違って眼圧は自宅での自己測定ができないため、目薬を継続しにくいと言われています。また、飲み薬と違って目薬はさし忘れが多く、上手に正しく目薬をさすことは意外に難しいようです。緑内障の患者さんは、とにかく毎日きちんと目薬をさすことが肝心なので、眼科での診察時に目薬の使い方についても遠慮せずに相談してください。