一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2016年8月 脊柱側弯症

宇部市医師会整形外科医会

脊柱側弯症は背骨が自然に曲がってくる病気です。脊柱側弯症の定義で「曲がる」という言葉は平面(二次元)での曲がりだけのような誤解を受けやすいのですが、正確には「捻れて曲がる」というべきで、背骨の軸の「捻れ」と前後面での「曲がり」があるものが問題となる脊柱側弯症です(図1)。

【図1】脊柱側弯症のレントゲン

この脊柱側弯症は、学校健診で検査することが義務付けられています。脊柱側弯症の中で思春期特発性脊柱側弯症は10才位から発症し、女子に多く見られる病気です。「特発性」とは原因が分からないという意味です。背骨の曲がりは、本人の姿勢が悪かったせいでもなく、親の生活指導が悪かったわけでもありません。発症率は約0.7%で150人に1人くらいは側弯症の子どもがいますので、決して稀な病気ではありません。早期に発見すれば、装具で進行を止めることもできます。背骨が曲がってきても痛みはありませんので、早期に本人や家族が気付いて受診することは稀です。背中や腰の外観上の左右差が明らかになる頃には、曲がりがかなり進行しており、手術が必要になることもあります。そうなる前に検診で見つけることが大事です。

健診前に学校から配られる健康調査票にある「おじぎをして、背中腰の左右の高さを観察する」前屈テストが有効ですので、家庭でこのチェックを必ずして下さい(図2)。実際に、宇部市山陽小野田市では、この側弯症チェックが健康調査票に入ってから、学校健診での側弯症二次検診比率は飛躍的に伸びました。小学校高学年や中学生になると、親が子どもの裸の背中を見る機会が減ってくると思いますが、ちょうどこの時期に思春期特発性側弯症は発症してきます。年に一回子どもの背中をじっくり観察することで、進行した側弯症になって発見されるのを防ぐことができます。

【図2】前屈テスト

学校健診では、上半身裸または衣服の背中を大きくめくって検診します。これは側弯症の検診にとって非常に大事な事です。思春期の特に女子の羞恥心への配慮から、一時着衣の検診となった時期もありましたが、側弯症の発見には裸の背中を見る事は必須なのです。ここで早期発見の機会を逃しては、側弯症の子どもにとっては一生の大事になります。側弯症は決して稀な病気ではなく、あなたのお子さんがなるかもしれないし、その大事な友人がなるかもしれないのです。健診の脱衣にご理解をお願いします。

この思春期特発性脊柱側弯症は急速に進行することがありますので、子どもの背中を観察して気になることがあったり、学校健診で脊柱異常を指摘されたら必ず整形外科を受診させて下さい。側弯症の正確な診断には、専門の整形外科医によるレントゲン撮影が必須です。
現在、ネット上には様々な情報があふれています。「脊柱側弯症」で検索して最初にヒットする情報は、残念ながら医療機関のホームページではなく、民間療法で側弯症を体操やマッサージで治すというものがほとんどです。側弯症の治療で、保存療法(手術以外の方法)でエビデンス(有効性の証明)のあるものは、現在は装具療法のみです。整形外科を受診すると、装具療法が必要な曲がり以下の比較的軽い側弯症は、経過観察として、数か月後や半年後の受診を指示されます。ここで「何もしてもらえなかった」と誤解して、民間療法に流れてしまいますと、2.3年後には手術が必要な曲がりになってしまうこともあります。側弯症の子どもにとって、整形外科医による定期的な経過観察(レントゲン撮影)は欠かしてはならない大切な医療です。

保護者、学校、学校医、整形外科医の綿密な連携で、側弯症の子ども達が、病気が進行して手術が必要になってから発見されることのないようにしたいと思っています。