知っておきたい病気
2019年3月 こどもの食育について
よしもと小児科医院
吉本 賢良
食べることは将来にわたる健康を保つための基本です。生きる力を育む食育の観点から1:適切な栄養の接種、2:望ましい食習慣の基礎、基本を身に着け、3:食事作法やマナーを学び、4:生命や自然を尊重し(頂きます)、5:食にかかわる様々な人たちへの感謝(御馳走さま)、6:我が国の優れた食文化の理解、7:食べ物を通して生産、流通など社会の仕組みを学ぶ等、国は学校給食に7つの目標を定めています。
小学校校医として給食試食会へ参加してみると、今の子供たちがいかに大事にされているかその食材を通してわかります。週4回はご飯(宇部産ヒノヒカリ100%)1回はパン食(山口県産の小麦粉と米粉使用)牛乳、野菜類は地元産で、だしは昆布、かつお節から作るとのこと。すべて生産地の確かな物が使用され、主食、主菜、副菜、牛乳で昼食一人分約600カロリー前後。栄養士さん給食関係者の方々の苦労がうかがえます。
このように週5回は学校でとてもバランスの取れた安全な昼食を頂いていますが、家庭ではどうかといえば同校の食生活アンケートでも朝食をときどき、あるいは全く食べない児童も約30%と子供達への食についての親御さんの関心はまだまだ低く、食育の重要性を理解していない大人も多いようです。
食べ方(マナー)では、テレビを見ながらの食事、家族がべつべつの物を食べる「個食」、食事の時親が不在の「孤食」も最近多く、食卓で「いただきます、ごちそうさま」、食べるときの姿勢、おはしの持ち方や上げ下ろし、などの行儀や作法、など全く無頓着な子供も増えているそうです。家族で囲む食卓で料理をおいしいとか、まずいとか、きらいな物にも挑戦したり色んなことを話題にして、親子がコミュニケーションをはかり楽しい「だんらん」をすごせば情緒の発達にも良く家族の絆ももっと強いものになることでしょう。やはり一番大切な事は家族で囲む食卓です。毎日は無理かもしれませんが心掛けておきたいものです。大袈裟ですがある意味教育の場でもあると思います。
今は大人も子供も忙しいと言われている現代、手軽に食べられる子供達の好むファーストフードがあふれ我々の食環境は空腹を満たすという意味では便利になったと言えるかもしれませんが食育の面からすると心配な面もあります。概して脂質が多く、味付けは濃く、高カロリーで、幼児期から学童期にかけての小児のメタボリック症候群と無関係ではありません。またスーパーには物があふれていますが、毎日口にするものだから安全性、バランス、栄養素などもよく考え選択したいものです。子どもの好きな物を言うなりに与えるのではなく食べさせる必要のあるものを考えて作るような大人の積極的な関与も望まれます。