一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2021年6月 生きにくい世界の中で。(あるいは精神科外来における奇妙な現象について)

水木神経内科医院
水木 章夫

第二次世界大戦と太平洋戦争の終結からほぼ80年が過ぎ、戦後のアメリカに追従しておけば良かった時代が「コロナ禍」と共に過ぎ去り精神科の外来にも大きな変化があらわれてきました。

時代に対応できない組織や会社において「適応障害」が増加し、役人・議員・会社の取締役・教師・医師などの方々が時代に対応できず、弱い立場の方々に責任を押しつけ、あるいは放棄しそのために「適応障害」・「パーソナリティ障害の先鋭化」がおきています。

その中でも最も深刻な疾患が「適応障害」です。

適応障害は、ある特定の状況や出来事がその人にとってとてもつらく、耐えがたく感じられそのために精神的不調や行動面に大きな変化が起き、強度の不安や鬱状態に陥り自力では回復困難になる現象です。

この状態を所謂「精神疾患」の中に分類して良いかは一考を要します。

適応障害を起こしやすい状態は「不十分な会社の対応」「実情を無視した書類一辺倒の公務員」などが主なストレスの元となっていることが多いようです。

現れてくる症状は「極度の不安」「抑うつ状態」「恐くて出勤できない」等で、社会生活を続けることが出来なくなり「引きこもり」になって行きます。

このときに、叱責したり闇雲に励ましたりすると事態はさらに悪化して行きます。その治療として投薬だけでは解決できないため、職場の環境や家庭環境をその人に応じたものにする必要があります。しかし本人はあらゆるものに対して不安を抱いているため自ら訴え出ることをせず、さらに深刻な事態になって行きます。

もし自分もなんとなくおかしいなと感じたり、周囲の人がおかしいぞと思うようなときには、薬物治療と同時に不安や生活状態全体をサポートしてくれ、会社や公的機関に相談してくれるような医療機関、特に精神科を受診する必要があります。

原因が本人の外側にあるため患者さんだけ診察していれば良い物ではありません!

特に内科を受診したついでに抗不安薬や睡眠導入剤を処方してもらって解決することではありません。

精神科の受診にためらいのある方や、会社から「やる気の問題だ」と決めつけられて出勤を強要される様な方は一人で悩まずに、きちんとした精神科を受診する必要があります。

とにかく「おかしいな」と思われた方は早めに「精神科」の受診をお勧めします。

さて、受診の際に特にご注意いただきたいことは「タイミング」です。不安や絶望のあまり取り返しの付かない事態になってからでは遅すぎるのです。

「退職願を出してしまった」「返す当てのない借金をしてしまった」などの後では最終的な個人の損害は如何とも為しがたいのです。

不安な方はくよくよしていてもそのままにせず、早めに受診してください。

死ぬよりはましです!!!