知っておきたい病気
2025年10月 リハビリテーションの役割
宇部第一病院 整形外科
蒲地 康人
リハビリテーションとは、「病気やけがで失われた 機能を回復するだけでなく残された力も最大限活かし、その人らしさを再び取り戻す活動の全て」であると捉えています。日々、多くの高齢者の医療に携わる中で、筋肉や関節などの運動器の向上だけでなく、 歩く、食べる、入浴するといった日常の動作を支えることに加えて、家庭や地域、社会とのつながりを守り、人生をより豊かに生きることを支援する視点が大切だと感じています。
この考え方の枠組みとして「ICF(国際生活機能分 類)」があります。ICFでは、人の生活を「心身機能」「活動」「参加」という三つの側面から捉え、さらに「性格や習慣といった個人の特徴」や「家族や地域 の資源、生活環境」といった背景も含めて考えます。
リハビリは「できないこと」だけに注目するのではなく、「できること」や「得意なこと」を基盤にし、家族や地域の資源、生活環境を整えながら、その人らしい生活の実現を目指します。
医療保険と介護保険のもとで提供されるリハビリについて解説します。
まず医療保険で行うリハビリにはいくつかの形がありますが、その中でも代表的なのが「疾患別リハビリテーション」です。脳卒中や骨折、心臓や肺の病 気、がんなどが対象で、それぞれに標準的な算定日数が設けられています。たとえば運動器リハビリは原則150日までです。リハビリは20分を1単位として計算され、日数や時間の範囲内で提供されます。
疾患別リハは、急性期一般病棟、地域包括ケア病棟、回復期リハビリ病棟、医療療養病棟、そして外来といった幅広い場で行われています。急性期から回 復期では機能回復や在宅復帰に向けたリハが重視され、地域包括ケア病棟では治療後の生活を見据えた支援が行われます。医療療養病棟では長期療養の方に対して廃用予防や機能維持を図り、外来リハでは通院しながら機能回復や社会生活を支える役割を担っています。それぞれの場面で役割や重点は異なり ますが、いずれも生活を支える重要なリハビリとして位置づけられています。
介護保険で行うリハビリには、施設でのリハビリと居宅でのリハビリがあります。施設でのリハビリは、介護老人保健施設(老健)や介護医療院で実施され、老健では在宅復帰に向けた支援、介護医療院では廃用予防や生活機能の維持を中心としたリハビリが行われます。
居宅でのリハビリには、通所リハビリ(デイケア)と 訪問リハビリがあります。通所リハビリは主に病院や老健などに併設された事業所で実施されるもので、1 ~2時間の短時間から6~7時間の長時間まで幅広い時間設定があり、事業所ごとに特色があります。訪問リハビリは利用者の居宅において、20分単位で日常 生活に合わせた練習などを行います。
なお、リハビリは医療保険と介護保険に限られるものではありません。障害者総合支援法のもとでは、若い世代や難病のある方を対象に「自立訓練(機能訓 練・生活訓練)」が行われ、生活の自立や社会参加を支える役割を担っています。
リハビリは、医療・介護・障害福祉という複数の制度のもとで提供されますが、制度の違い以上に大切なのは、一人ひとりの生活にどう寄り添うかという視点です。今後も医療従事者として専門知識とチームの力を活かして、その人らしい暮らしを守り続けるお手伝いをしていきたいと思います。