知っておきたい病気
2017年1月 JIA(若年性特発性関節炎)について
きばた小児科
木畑 鉄弘
小児科の病気にJIA(若年性特発性関節炎)があります。かつて若年性リウマチと呼ばれていた病気です。本邦では小児10万人あたり約10人程度と言われていますので、宇部の年間出生数が1200~1400人程ですから、約8年に1人の割合で発生することになります。
「16歳未満で発症し、6週間以上持続する原因不明の関節炎で、他の病因によるものを除外したもの」と定義されており、7種類に分類されていますが、発熱など全身の症状を伴う「全身型」と、関節症状が中心となる「少関節炎」「多関節炎」で約90%を占めていますので、これらについて述べたいと思います。
「全身型」はJIAの約40%を占めており、最も多い病型です。関節炎と発熱を必ず伴いますが、関節炎は指のような小さい関節から膝や手首などの大きな関節まで、どの関節にも起こりえます。朝に症状が強く、こわばりを感じることが多いようです。
発熱は、短時間のうちに39~40℃まで体温が上昇したかと思うと、解熱剤も使わないのに平熱まで下がるような、上下の激しい発熱(弛張熱)を特徴とします。
関節痛も発熱も、それ単独なら通常の風邪等で見られる症状ですが、発熱がしつこく続いており、午前中に関節の動きが悪いようであれば可能性があります。
また、MAS(マクロファージ活性化症候群)と呼ばれる、全身の激しい炎症で命を落とすケースがあります。
「少関節炎」「多関節炎」は、いわゆる成人のリウマチに似ています。関節痛、関節の腫脹、それまで曲げることのできた関節が曲がらなくなったり、朝のこわばりを感じるようになります。微熱を伴うケースもありますが、高熱となることは稀です。
この両者は症状のある関節の数で分けられ、発症から6か月以内に5箇所以上の関節に症状があれば「多関節炎」となります。「少関節炎」ではぶどう膜炎に代表される、眼の合併症が危惧されます。
いずれの病型も、発熱や関節炎だけでなく、各臓器の合併症が問題となることがしばしばです。そのため、各科の協力・連携が欠かせない疾患です。治療として非ステロイド抗炎症薬、ステロイド、生物学的製剤の使用が検討されますが、副作用への対処も必要となるため病状と患者様の意思により、適宜選択されます。「全身型」は急激な全身の炎症の悪化、「少関節炎」「多関節炎」は長期的な関節の変形を防ぐためにも早期発見が重要となります。
また、JIAは小児慢性特定疾患治療研究事業の対象となっておりますので、18歳未満の場合は治療費の自己負担分が補助されます。
定義 | |
全身型 | 1関節以上の関節炎と2週間以上続く発熱(うち3日間は連続する)を伴い、以下の徴候を1つ以上伴う関節炎。 1)暫時の紅斑、2)全身のリンパ節腫脹、3)肝腫大または脾腫大、4) 漿膜炎 |
少関節炎 | 発症6か月以内の炎症関節が1~4か所に限局する関節炎。以下の2つの型を区別する。 (a)持続型:全経過を通して4関節以下の関節炎。 (b)進展型:発症6か月以降に5関節以上に関節炎が見られる。 |
多関節炎 | 発症6か月以内に5か所以上に関節炎が及ぶ型リウマトイド因子が陽性か陰性かで、さらに2つに分類される。 |
(小児慢性特定疾患情報センターHPより抜粋改変)