知っておきたい病気
2017年7月 滲出性中耳炎という病気をご存知ですか
なかの耳鼻咽喉科クリニック
中野 博孝
あなたのお子さまはよく聞き返したり、話しかけても返事をしなかったりすることはありませんか。小さな子供は気がつかないうちに、滲出性中耳炎という病気になっていることがあります。
滲出性中耳炎とは、鼓膜の内側(中耳)に水がたまってしまい、耳の聞こえが悪くなってしまう病気です。通常、痛みを訴えたり発熱したりすることがないため、見過ごされていることが多くあります。その結果、気がついたときには、聞こえが悪くなっていたり、言葉の発達が遅れたり、発音がおかしくなったりします。10歳頃までには自然によくなることも多いのですが、難治化してしまうこともあるので注意が必要です。乳児や幼児では急性中耳炎から始まることも多く、2歳以下であること、幼稚園や保育園などの集団生活をすることなどが影響するといわれています。
それでは、滲出性中耳炎と診断された場合、どのような治療をするのでしょうか。鼓膜に異常がない場合は、お薬をのんだり、鼻水をしっかり吸いとったりして、3か月程度様子をみることになります。その他、診断をつけて治療方針を決めるために、鼓膜切開をすることもあります。多くの場合は、お薬で経過を見ている間に、中耳の水が徐々に抜けてよくなります。3か月たっても水が残っている場合には、積極的な治療が必要となります。音の聞こえがどのくらい悪くなっているか、また鼓膜がへこんだり、鼓膜が中耳に癒着したりしていないかを調べます。これらの異常がなければ、引き続きお薬で経過を見ていきますが、異常があれば鼓膜に穴をあけて、チューブをいれることがすすめられます。また10歳を過ぎた頃の子供は、すでに耳管(中耳と鼻をつなぐ管)の機能がほぼ完成しており、自然には治りにくくなっています。そのため、早期から積極的にチューブをいれることをすすめられることもあります。鼓膜にチューブをいれると、チューブや耳管から中耳の水が排出されやすくなります。その結果、聞こえが改善したり、鼓膜の癒着を防いだりすることができます。このチューブは、たいていの場合早くぬけるタイプで数か月、長くとどまるタイプでも1年から2年程度で自然にぬけます。しかし、2年程度たっても自然にぬけなければ、医師がぬくことを検討します。そのころには、耳管の機能がよくなっているため、チューブがなくても、中耳に水はたまりにくくなっていることが多いからです。チューブが抜けたあとの穴は多くの場合、自然にふさがりますが、10%程度は鼓膜に穴が残ってしまうこともあります。特に自覚症状がなければ、穴はそのまま放置しておくことが多いのですが、聞こえが悪くなっている場合や、水泳で中耳炎を繰り返すような場合は、コラーゲンの膜などをはったり、手術をしたりして穴をふさぐこともあります。
滲出性中耳炎は本人の訴えがあまりないために、発見されにくい病気です。お子さまの耳の聞こえが悪いのではないかと気になったときは、一度耳鼻咽喉科で診察を受けられてはいかがでしょうか。
(耳の構造)