一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2018年2月 大腸の働きと便秘解消について考える

北村クリニック
北村 陽介

人は水を飲み、食べ物を食べ栄養素に分解し、それらを体の血液に取り込み栄養を手に入れます。そして消化できない余分な残りかすを便として排泄します。人の口から食道・胃・小腸・大腸・肛門に至るまでの1本の長い管でできていますが、それぞれの場所によって働きは異なります。
今回は大腸の働きと便秘についてお話します。大腸の全長は約1.5mあり、盲腸、結腸(上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)、直腸に分けられます。直腸は消化管の最後の部分で長さ約20cmあり肛門として終わります。
大腸は、小腸で吸収された残りかすから、大腸の前半部で水を中心に吸収して、大腸の後半部では便を蓄積し適切なタイミングで排便できるまで貯めておきます。大腸の働きは小腸から送られてきた粥(かゆ)状の内容物を肛門側にゆっくり運びながらその間に水分をしっかり抜き取って、形の良い便を作るように調整することなのです。
形の良い、程良い硬さの便が直腸内に送り込まれると直腸の壁が伸びて、その刺激が脳に伝わり排便をしなさいと命令が下り便意を感じます(トイレに行きたくなります)。
現在高齢化に伴って便通の異常、特に便秘患者の増加が著しい状況にありますが、そもそも便秘とは何でしょうか。
医学では一般的に、4日以上排便がなく、不快な症状があり、日常生活に支障がある場合のことを言います。このような状態が3か月以上持続するものを慢性の便秘と呼びます。
さらに詳しく言えば、原因によって機能性(腸の機能が原因でおこる便秘)2次性(内分泌疾患や癌など何らかの病気による便秘や定期内服している薬の影響での便秘)に大きく分けて考えなければいけません。2次性の便秘の場合は飲んでいる薬の調整、検査にて病気が見つかればその原因となる病気の治療を優先すべきであり今回、詳細は割愛します。

高齢者にも多い機能性便秘はさらに以下の3つに分けられます。

  1. 弛緩性便秘:大腸全体の動きが悪い(運動と緊張が低下)。腸の内容物が停滞し輸送が遅れ必要以上に水分が吸収され、硬い便となり排便が遅くなる便秘のこと。中高年女性、高齢及び全身衰弱、腹圧低下のある人に多い。
  2. 痙攣性便秘:自律神経(副交感神経)の過緊張により大腸の異常分泌や下部大腸の運動緊張が強くなるためひきつった感じの収縮が起こり、腸管内容物の通過異常が起こることにより生じる便秘のこと。主に過敏性腸症候群、下剤の乱用の方にみられます。
  3. 直腸性便秘:食後などに便意あるも、これを無理に抑える習慣を繰り返すことによって排便反射が弱くなり、直腸に便が達したにもかかわらず便意を感じなくなる便秘のこと。排便の意識的抑制、直腸肛門病変、無力性体質、浣腸の乱用の方に多い。

少し難しい話になってしまいましたが、以上のように便秘といっても色々なタイプがあり原因も人それぞれで違うということです。
どれに自分が当てはまるかをしっかり見極めることが大事で、場合によっては検査になることもありますので医療機関に相談してみてください。
ちなみに高齢者の便秘の原因として何が多いでしょうか?老年者の便秘の特徴は加齢に伴う腸の筋肉の萎縮による大腸運動の低下、腹筋力の低下で排便時にいきんでも腹圧が上昇しにくい、運動不足による腸の運動の低下、軟らかいものを好み食物線維が不足するなどの要因が考えられています。

ちなみに排便しやすい便とはどんな便でしょうか?それは大きくて柔らかい便のことです。

では良い便を作るのにどうすれば良いか、一般的に言われている便秘解消に役立つ情報を少しまとめてみましたのでご参考になれば幸いです。
基本的なことでは1日3回の規則正しい食事の摂取です。胃に食物が入ると胃・結腸反射が起こり便意をもよおします。朝、便意のない人は、朝食を十分にとり便意をがまんしないで朝食後に排便習慣をつけてください。    
また水分をしっかりとることも重要で、とくに起床後にコップ1杯の水でも違います。朝起きて冷たい水や牛乳を飲むとより効果的です。
おなかにガスが溜まりやすい時には柑橘(かんきつ)類を食べるとよいそうで、食物線維(特にペクチン)も多く含むのでガスの発生は少なくなると言われています。食物繊維とは食物の成分のうち、人の消化酵素で分解されにくいもので、食物繊維は便の量を増やし、便の形を整えてくれます。

食物繊維には水に溶ける水溶性と水に溶けない不溶性があります。海藻や豆類に多く含まれる食物繊維は水溶性で水分を保持する力が強く、消化の過程で乳酸菌の餌になり整腸作用があります。
ごぼうや豆類、芋類は不溶性食物繊維で胃や腸で水分を吸収して大きくふくらみ便のかさを増してくれます。
腸内細菌のバランス維持に良いのが発酵食品です。味噌、ヨーグルト、キムチは乳酸菌が豊富です。ヨーグルトの乳酸菌は、胃酸に弱いので食後に食べましょう。納豆菌は、悪玉菌を排除する作用があります。
以上のような効果が期待できる食事の摂り方を工夫して良い便を作り良い腸内環境を整えましょう!

食後の散歩も有効です。ストレスや睡眠不足はダメ。家のトイレが洋式の方は、少しかかとを上げて前かがみの前傾姿勢をとれば力まずスムーズに排便することができます。
腹部のマッサージ(うつ伏せに寝てゴロゴロ)も外から腸管に刺激を与えることによって腸のぜん動運動を高めてくれます。

このように腸のぜん動運動を調整し排便反射を促す生活習慣の改善をぜひ試してみてください。以上のようなことを試しても十分な効果が得られない場合には、症状に応じて治療薬が用いられます。
便秘の人の中には、市販薬などを自己流で服用している場合もありますが、薬剤の使用に関しては医師や薬剤師にしっかり相談して、症状にあわせた薬剤を適切な量で使用するようにしましょう。