一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2017年10月 ドライアイ

永谷眼科
永谷 学

近年テレビやインターネットなどで見聞きすることの多い眼科疾患にドライアイがあります。ドライアイとは様々な要因により涙液層(油層、液層など)の安定性が低下する疾患で眼不快感や視機能異常を生じ眼表面の障害を伴うことがあるものと定義されています。日本全国に約800~2,200 万人いると推測されています。涙の分泌そのものが少ない『量的異常タイプ』と涙の成分の異常により涙の保持能力が低下する『質的異常タイプ』の大きく2つに分類されます。涙はさらさらとした液層だけでなく蒸散を防ぐ油層や水分を目の表面にとどまらせる働きを持つムチンと呼ばれる蛋白質成分があります。『質的異常タイプ』では油層やムチン、角膜上皮などに問題があり分泌された涙が目の表面に留まれないためすぐに乾いてしまいます。

◆涙の産生と流れ

涙の液層成分は上まぶたの外側にある涙腺で作られ目の表面を潤した後、目の内側にある小さな上下の穴『涙点』へ入り、上下涙小管、涙嚢、鼻涙管、鼻腔へと流れます。まばたきの度にこれらが繰り返されます。なお涙の油層成分は上下のまぶたにあるマイボーム腺から、分泌型ムチンは結膜の杯細胞や涙腺から、膜型ムチンは角膜や結膜の上皮細胞で発現することがわかっています。

◆涙の役割

涙は目の表面の細胞を乾燥から守り、組織に栄養や酸素を供給し、外界からの異物や菌が侵入するのを防ぎます。また、角膜の表面を滑らかな曲線にすることで、鮮明な画像を脳に送り届けます。ドライアイがあると実際に見えている視力(実用視力)の低下がおこる場合があります。

◆症状

次に示す症状のうち5つ以上当てはまるとドライアイの可能性が高いといえます。

簡単セルフチェック
10秒チェック:10秒以上目を開けていられない場合、ドライアイの可能性があります。

◆診断基準

涙液層破壊時間(BUT)(*フルオレセインという染色液で角膜を染め、涙の層が途切れるまでの時間)が5秒以下で且つ眼不快感や視機能異常などの自覚症状を有するものがドライアイと診断されます。
(診断基準は2016年に改定されています)

◆要因

コンタクトレンズの装用、長時間のパソコンやスマートフォンの使用(まばたきの回数が約3分の1に減るといわれています)、乾燥した部屋や飛行機の中、睡眠不足やストレスの多い状況、加齢、喫煙、ある種の降圧剤や精神安定剤の服用など様々な要因で目が乾きます。またの自己免疫疾患のシェーグレン症候群や皮膚や粘膜の過敏症であるスティーブンス・ジョンソン症候群などの病気では涙腺が障害されると涙がほとんど出ない重篤なドライアイを引き起こします。

治療

病態に応じて種々の治療を行います。

◆日常生活での注意点

参考・引用資料:ドライアイ研究会H.P.
日本眼科学会H.P.