知っておきたい病気
2019年11月 コンタクトレンズ装用に伴う眼障害
くまがい眼科
熊谷 直樹
はじめに
コンタクトレンズ(以下CLと略します)は、近視、遠視、乱視などの屈折異常を矯正するために、眼球に直接のせて使用する医療機器です。CLは便利な機器ですが、その使用が原因で種々の眼障害が発生することがあります。
CL装用に伴う眼障害の代表的なものは、細菌やアカントアメーバなどによる角膜感染症、アレルギー性結膜炎、ドライアイなどです。
1.CL装用に伴う角膜感染症
角膜(黒目)は目の中に光を取り込むための透明な器官です。CL装用に伴って角膜表面に小さな傷ができたりCLの洗浄が不適切で微生物が付着したりすると、微生物感染が生じてしまいます。感染が生じると眼痛などが起こり、治癒しても角膜が混濁してしまうこともありますので、感染症を起こさないように心がけることが大切です。
・細菌性角膜炎
角膜に細菌が感染すると、眼球全体が充血して、眼痛、まぶしさなどの自覚症状を伴います。感染部位の角膜は透明性が失われて混濁し、時に角膜が融解して潰瘍(融解して表面が陥凹すること)が生じます。病状の重篤さは感染する細菌の種類によって異なります。軽症の場合は点眼や眼軟膏のみで治癒します。重症の場合には入院のうえ、点滴や眼球への注射などの治療が必要となり、強い視力障害を残すことがあります。
・アカントアメーバ角膜炎
アカントアメーバは水中や土中に存在する原虫です。CLの保存液の中でもアメーバは増殖します。アカントアメーバ角膜炎では細菌性角膜炎と比べて神経に炎症が生じやすい、進行した場合には輪状の病変を呈する、などの特徴がありますが初期には両者の鑑別が困難なこともあります。アカントアメーバ角膜炎は通常の点眼や眼軟膏のみでは治療が困難で、角膜上皮掻爬(点眼麻酔の上、角膜の表面を剥ぐこと)や消毒剤による洗眼、抗真菌剤の投与などが必要です。原則として入院治療が必要です。
角膜感染症の予防のためのCLの使用方法
- 使い捨てソフトコンタクトレンズ(以下SCLと略します)は使用期限を守りましょう
使い捨てSCLには1日使い捨てレンズ、2週間頻回交換レンズ、1ヶ月定期交換レンズなどがあります。これらのレンズを定められた期間を超えて使用すると、角膜感染症が起こりやすくなります。 - CLを正しく洗浄しましょう
CLは一日使用すると汚れなどがレンズに多数付着してしまいます。これらを適切に洗浄しないと感染症の原因となります。(洗浄の必要の無い1日使い捨てレンズは除きます)- ハードレンズ、SCLともにこすり洗いをきちんとするように心がけましょう。
- 水道水でSCLを洗浄・保存することはアカントアメーバ角膜炎の原因になるとされています。専用の洗浄保存液を使用しましょう。
- SCLでは、保存ケースも毎日洗浄し、洗浄後はケースを裏返しておいて完全に乾燥するようにしましょう。洗浄液を残したまま、新しい洗浄液をつぎ足して使用することは、細菌やアカントアメーバの増殖の原因となり大変に危険です。
- ケースからレンズを取り出して装用する直前に、洗浄液でもう一度レンズをすすぐようにしましょう。
2.CLによるアレルギー
CLの装用により上眼瞼結膜(上まぶたの裏の赤目)に増殖性変化をともなうアレルギー性結膜炎が生じることがあります。この原因はCLに付着した汚れに対するアレルギーと考えられています。目やに、かゆみなどを伴ったり、CLが上方にずれやすくなったりします。アレルギーが生じるとCLの装用が困難になることがありますが、視機能への影響はありません。
CLによるアレルギーへの対策
CLの洗浄を丁寧にすると汚れがつきにくくなりますが、実際にはこれだけで症状が軽快することは多くありません。
2週間頻回交換レンズ、1ヶ月定期交換レンズでは1日使い捨てレンズに交換すると多くの場合、症状が改善します。交換ができない場合には抗アレルギー剤の点眼液を併用します。重症例ではCLの装用を一時期中断して、抗アレルギー剤やステロイド剤で加療します。
3.ドライアイ
SCLを装用すると、角膜の知覚神経が鈍くなる、SCLの表面から涙液が蒸発しやすい、などの理由によりドライアイを生じることがあります。CLによるドライアイは装用後数時間がたってから生じることが多く、乾燥感や異物感を訴えます。
ドライアイへの対策
- 乾燥しにくいレンズに変更する
(ア)SCLは製品により眼表面の水分の保持力に大きな違いがあります。使用中のレンズよりも乾燥しにくいレンズがあるかどうかご確認ください。 - 点眼液を使用する
CL装用時にも使用できる、人工涙液やドライアイ治療薬を併用します。
おわりに
CLは便利な機器ですが、その使用にはリスクもあります。CLを適正に使用して、眼の障害を起こさないように日頃から心がけましょう。