知っておきたい病気
2026年2月 改訂された【高血圧管理・ 治療ガイドライン2025】の変更点
小沢内科医院
佐伯 幸男
生活習慣病のなかでもよく知られている高血圧症に関して、2025年7月に日本高血圧学会が高血圧管理・治療ガイドラインを改訂しました。
高血圧が原因と考えられる脳心血管疾患の死亡数は年間約17万人と推定され、脳心血管疾患では死亡 要因として最大です。わが国の高血圧有病者は4300万人と推定され、このうち3100万人が管理不良と考えられています。1400万人が高血圧と気づいておらず、高血圧と気づいていても未治療なのが450万人、薬物 治療を受けていても管理が不十分な方が1250万人もおられます。
今回、改訂された「高血圧管理・治療ガイドライン 2025(JSH2025)」の“主な変更点”と新たな治療・ 管理の柱となった“日常生活での血圧測定”や“生活習慣の改善”についてご紹介したいと思います。
まず、高血圧の診断基準はこれまでと変更なく、診察室で140/90mmHg以上、家庭(自宅)で135/85mmHg以上を高血圧と診断します。診断は複数回の測定で安定した血圧値と記録で行われます。緊張の影響の少ない日常の血圧の平均値を把握するために家庭血圧が重視されます。
注意すべきよくきかれる誤解があります。令和6年 に市の特定健診の指導要項で“直ちに”医療機関を受診すべき数字として血圧160/100mmHg以上が示され、これ以下であれば放置してよいと誤解されている 方が多くみられます。これは誤りで、テレビCMの“血 圧130超えたら…”は正しく、高血圧に対してアクションを起こす目安は血圧130以上と考えてください。
今回の改定の大きな変更点は目標血圧の統一化です。従来75歳以上の年齢や糖尿病などの基礎疾患により異なっていた目標血圧が、全ての年齢、疾患で同じ基準になりました。診察室で130/80mmHg未満、家庭(自宅)で125/75mmHg未満です。高血圧治療目が年齢・基礎疾患によらず単純化されたことは、誤解を減らすのに役に立つと考えられます。
家庭血圧は、診察室よりも日頃の血圧の状態をより 反映していると考えられ、今回の改定でも重要視されています。特に朝の起床後一時間以内の血圧は、脳卒中・心筋梗塞の発症と強く関連しています。家庭血圧測定の手順は、朝夜の測定を行い、朝は起床後一時間以内・食前・排尿後、夜は就寝前、ともに座位1-2分安静後に2回測定し、その平均値を記録することが推奨されています。
薬物療法に関しては、まず一種類の薬剤から開始 (カルシウム拮抗薬、ARB、利尿剤など)し、効果が 不十分であれば2剤併用し、必要に応じて3剤以上や ARNI・利尿剤を使用し、目標血圧達成までの期間を短縮させ、合併症リスクを減らす方針が示されています。特に基礎疾患(糖尿病・腎臓病)がある場合は早期から複数の薬を使用することが推奨されていま す。
今回の改定では薬のみに頼らない生活習慣の改善の重要性が強調されています。塩分制限(1日6g未 満)、運動(有酸素運動を週150分)、肥満改善(BMI 25未満)、飲酒抑制(日本酒1合/ビール中瓶1本まで)など従来からの生活習慣改善に加え、野菜(350g/ 日)・果物(200g/日)などカリウムの多い食品の摂取や低脂肪乳製品、緑茶、コーヒーなどの摂 取を推奨。DASH食や地中海食などカリウムに加えカルシウム、マグネシウム、食物繊維や不飽和脂肪酸の積極的な摂取と飽和脂肪酸や食事性コレステロールを抑制した食事パターンが推奨されています。カリウムの摂取量に関連して、尿検査による尿Na/K比を知ること で、自分の食事の塩分(ナトリウム)とカリウム摂取量のバランスを確認でき、血圧コントロールの役に立つことが示されています。
まとめると、①すべての年齢で同じ目標血圧が設定され、治療目標がシンプルになりました。②家庭血圧測定を重視するようになりました。③食事や運動など薬に頼らない生活習慣改善も大切です。
以上、かけ足で今回の改訂の要点を紹介しました。