知っておきたい病気
2023年8月 摂食嚥下とその障害について
たるもと耳鼻咽喉科クリニック
樽本 俊介
たるもと耳鼻咽喉科クリニックの樽本俊介です。2022年4月21日に宇部市東須恵で開業致しました。宜しくお願い致します。開業前は山口大学病院で摂食嚥下を専門にしていたことから、開業しても嚥下について診察や治療を提供したいと思いました。嚥下は英語ではswallowといい、ツバメと同じであることから、嚥下に力を入れていく医院を目指し、当院のロゴマークをツバメにしました。
摂食嚥下とは食物を歯で噛んで細かくして飲み込みやすいよう一塊りにして食道から胃に送り込むことです。食物をしっかり噛んで一塊りにすることが重要で、一塊りにすることができないと喉の中で食物がばらけてしまい、ばらけて喉に残った食物が気管に入る可能性があります。そうすると食べ物がのどに詰まって窒息する恐れや誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があるため、嚥下障害には注意が必要です。
嚥下障害でよく知られる症状は「食べ物がのみ込みにくくなった」や「食事中によくむせる」などが主ですが、食事が終わっても喉に残っている感覚を訴えたり、声を出す時にゴロゴロいうなどの症状も出ることがあります。また、食事量が減り体重が減少したり、嚥下性肺炎になり発熱を繰り返すこともあります。
嚥下障害の対処法ですが、①食物の形態を整えること②摂食する体勢を作ること③筋力や感覚のトレーニングをすることがあります。食物の形態については誤嚥が起こりにくい様に、食べ物の形態を工夫します。煮物など柔らかくて噛みやすいものは食塊を作りやすく、むせにくいと言われています。また、水や食物にトロミを付けることも食物が喉に移動する速度を低下させ、気管に入らないようにするためお勧めです。
摂食する体勢については飲み込む時に喉の力が入りやすいように顎を引く体勢にすることや背中を斜めに倒してもたれかかるような体勢で摂食しないことなどがあります。また、足を床につけて踏ん張って体に力を入れやすくすることも重要です。
トレーニングについては首や肩を動かし筋力をつけることや長く大きな声を出して声帯を閉じる発声訓練することが大事です。また、喉の感覚を敏感にして食物を感じとるという目的で冷たい氷や辛い刺激のあるものを少量摂取することも嚥下機能の改善に用いられています。
嚥下機能の低下の多くが加齢での喉の筋力や感覚の低下が原因とされていますので、そのような症状に心当たりがある方は是非一度嚥下の専門家である耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。