一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2023年7月 タバコにまつわるエトセトラ

はらぐち内科呼吸器科
原口 正彦

タバコの健康被害について話題を提供し皆さんとタバコについて考えてみたいと思います。

① 世界禁煙デー

毎年5月31日は世界禁煙デーです。欧米各国はタバコのパッケージに健康被害に関する写真を印刷し禁煙を推奨してきました。今年の世界禁煙デーに合わせてカナダ政府はタバコ1本1本に「一服ごとに毒」「タバコはがんを引き起こす」など健康被害リスクの警告文を印字する義務付けを世界で初めて導入すると発表したそうです。

➁タバコ規制枠組条約

2003年5月世界保健総会において全会一致で採択されたタバコ規制枠組条約の目的は“あらゆる手段を駆使してタバコの消費を減らすこと”です。各国が組織的に国際協力し死亡、疾病および障害を起こすことが科学的に明らかにされているタバコの消費削減を目的に制定されました。この条約を批准した国はタバコ規制に積極的に関与しなければなりません。欧米での取り組みと比較して本邦の取り組みは遅れている印象を受けます。

➂サードハンドスモーキング

屋内や車内での能動喫煙をファーストハンドスモーキング、排出されたタバコ煙が非喫煙者に吸い込まれることをセカンドハンドスモーキングと呼びます(受動喫煙)。タバコ煙が内装や家具などの表面に付着したのち再び気化しタバコ煙の成分が経気道的に非喫煙者の体内に入ることをサードハンドスモーキングと呼びます。サードハンドスモーキングには遺伝毒性があることが証明されており、“タバコの臭い”そのものが有害ということになります。

④ スモーカーズフェイス

喫煙によって皮膚の微小血流が低下し皮膚が障害を受けます。また、タバコの燃焼により発生した一酸化炭素が酸素の運び屋である血中ヘモグロビンと強く結合するため皮膚の末梢まで十分な酸素が届けられなくなり皮膚は慢性的な酸素不足の状態となります。スモーカーズフェイスには、顔の深いしわとこじわ、骨の輪郭の出っ張りが目立つようになり徐々にやつれていく顔、萎縮して灰色にくすんだ肌、オレンジ色、紫色、赤色のまだら模様のような顔貌、などの特徴があります。

➄喫煙女性に関する調査

(株)ファイザー社は2013年喫煙・非喫煙者の女性を対象に全国調査を行いました。喫煙者、非喫煙者ともに約70%が美容に関心を持っており喫煙者の80%で喫煙が美容に影響すると認識し月々の美容にかける費用も喫煙者の方が非喫煙者より高いとする結果を報告しています。

⑥京都女子大学研究グループのフロア分煙に関する研究

京都女子大学の研究グループがフロア分煙に関する報告をしています。喫煙フロア及び禁煙フロアに分けられているあるビジネスホテルの屋外、禁煙の1階ロビー、禁煙フロアおよび喫煙フロアの廊下でPM2.5の測定を行っています(ちなみにタバコ煙は一番身近なPM2.5と言ってもよいでしょう)。その結果、禁煙フロアと喫煙フロアを階で分けても受動喫煙は防止できないと結論付けています。

➆新型タバコ

新型タバコには加熱式タバコと電子タバコとがあります。加熱式タバコはいずれもタバコ葉の加工品を使用しておりいわゆる“ニコチン吸入装置”です。加熱式タバコには従来の紙巻きタバコと同様に健康被害があると報告されています。加熱式タバコから放出されるエアロゾルは従来の紙巻きタバコの煙と比較し目に見えにくく臭いもわずかであるため周囲の人が知らず知らずに受動喫煙してしまうという指摘があります。電子タバコのエアロゾル中に発がん成分(ホルムアルデヒドなど)が含まれることがわかっています。また、ニコチンを含まないことになっている電子タバコの中にニコチンを含むものが多数存在することも明らかになっています。新型タバコを禁煙の手段の一つにするような宣伝も存在するようですが結果的には禁煙に成功するのは難しく、従来の紙巻きたばこ、新型タバコの両方を使用している人もいるというのが現状のようです。

⑧”軽いタバコ“

いわゆる“軽いタバコ”にはフィルターの通気孔などに小さな穴が開けられていて機械でニコチンなどを測定する際ニコチンなどの量が空気で薄まって高い値にならないような細工が施してあるそうです。測定上では“軽いタバコ”でも、吸うと従来のタバコと同程度のニコチンが体の中に入っているのだそうです。

⑨おわりに

喫煙習慣が無くなるといろいろな疾患が減少すると言われています。そんな日が早く来ればいいなと思います。“医者の商売あがったり”になるかもしれませんが(笑)。
本稿は以下の文献を参考にさせていただきました。興味のある方はご参照ください。
禁煙学 改訂4版 2019 南山堂
ハリソン内科学第3版390ニコチン依存, p2842-p2845
月間保団連 2018 No. 1259 脱タバコ社会への課題と盲点
日本禁煙学会雑誌 2020 Vol. 15 No. 1 p11-16
厚生労働省:厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野、第3次対がん総合戦略研究 平成17年度 総括・分担研究報告書