知っておきたい病気
2023年2月 胆道感染症について
セントヒル病院 消化器内科
浜辺 崇衣
胆道とは、肝臓から分泌される胆汁の通り道で、胆管、胆のう、十二指腸乳頭部のことを言います。
肝臓で分泌される胆汁を、胆のうで水分と電解質を再吸収することによって濃縮、貯留し、十二指腸へ排出することで、小腸における脂肪の消化、吸収を促進し、肝内の老廃物を肝外に排出する役割をしています。
胆道に細菌などが感染した状態を胆道感染と呼び、感染を起こしている部位により胆のう炎と胆管炎に分かれます。
胆のう炎の原因としては約90%が胆石と言われており、食後の右上腹部痛や発熱、嘔吐などが症状として多くみられます。腹部超音波検査やCT検査で胆のうが腫れている、壁が厚くなっている、はまりこんだ石を認める、などの所見があります。重篤化すると胆のうの壁に穴があいたり、急性腹膜炎(腹腔内へ感染が広がり腹膜に炎症をおこした状態)へ移行することがあります。治療としては腹腔鏡下胆嚢摘出術が基本になりますが、重症度に応じて抗生物質の投与や点滴、経皮的胆嚢ドレナージが選ばれることもあります。胆嚢摘出術は、身体の負担の少ない腹腔鏡下の手術で行われることが多くなっています。
胆管炎は、総胆管結石や悪性腫瘍などが原因となり、胆管が閉塞し、うっ滞した胆汁に感染が生じたものをいいます。発熱や腹痛、黄疸、意識障害などがみられ血液検査やCT検査、超音波検査などで診断します。胆管炎は胆道内圧が上昇することにより、細菌や細菌内毒素(エンドトキシン)が血液中に移行しやすく、敗血症を生じることがあります。敗血症とは感染巣で細菌が増殖し血中に流出するものです。敗血症に至った場合はショックや意識障害、他の臓器不全などを合併することがあり、一般的には胆管炎は胆のう炎よりも症状が重いと言われています。治療は入院による絶食、点滴、抗生物質の投与に加え、できる限り早期に胆道ドレナージを行うことが推奨されています。胆道ドレナージとは、うっ滞している胆汁を、体外または十二指腸に排泄してあげることで、内視鏡を使った内視鏡的ドレナージ、体外から胆道を穿刺する経皮的胆道ドレナージ、手術を行う外科的ドレナージなどの方法があります。一般的には内視鏡を使って胆管にステントというパイプを入れる内視鏡的ドレナージが行われることが多いです。石があれば除去します。
胆石が元々ある方で右上腹部を中心とした腹痛や、悪心、嘔吐、発熱や皮膚や眼球結膜の黄染などが見られた場合、胆道系感染症が疑われ、早期の治療が必要な可能性があります。心配な症状がある方は、一度消化器内科を受診されることをお勧め致します。
内科的な治療、外科的な治療を病態や患者さんの状態に応じて選択していくことから、消化器内科医、消化器外科医が連携し、診断や、必要な治療の提供をスムーズに行うことを心がけております。