一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2025年6月 思春期の心の病気

山口県立こころの医療センター
村田 由紀

【思春期とは】

思春期は小学校高学年から高校生時代までの子どもでもなく大人でもない時期です。この時期には第二次性徴が始まり身体は大きく成長します。家庭で守られる存在だった子どもが家庭外の仲間との関係を最優先し始めます。子どもは生理的心理的社会的に大きく変化します。
また反抗期という表現もあります。反抗期には幼児期の第1次反抗期と思春期の第2次反抗期があります。思春期は親や権威に反抗し、それまでの価値観を破壊します。それには子どもが新しい生き方を見出す建設的な側面もありますが、あまりに激しいと思春期危機という言う方が適切な場合もあります。これまで素直でかわいかった子どもが思春期という疾風怒濤のなかで、暴言を吐き、暴れ、反発し、親と口を利かず、自室に引きこもり、不登校となる。子どもの反抗は親の信じる価値観も破壊し親も大きく揺さぶられます。思春期には子どもだけでなく親も変化を求められます。
一方、反抗期のない子どももいます。葛藤の先送りの可能性もありますが、反抗期がなければ駄目というわけではありません。親に「買い物の時は自分の3メートル以内に近づくな」と宣言する子もいれば、何でも親に相談する子もいます。思春期には個人差があります。

【思春期の心の病気】

子どもの心の病気は年代によって特徴があります。乳幼児期の主訴は虐待など環境の影響や発達の問題が多く、学童期には発達の問題などに起因する情緒や行動の問題が多くなります。思春期には情緒や行動の問題が増えます。この時期には摂食障害、自傷行為も多くみられます。また思春期は大人の精神疾患が始まる時期です。例えば幻聴や妄想を訴える統合失調症や、気分の落ち込みやハイテンションになる感情障害など、成人後も続く心の病気の始まりの可能性があります。この場合は思春期の混乱が終わるのを待つのではなく精神科治療が必要になります。薬物治療や入院治療を行うこともあります。
不登校も受診理由として多くみられます。不登校は一概には病気と言えません。薬物治療や環境調整が必要なのか、寄り添って待つことが重要なのか、病院ではその鑑別をしていきます。
思春期は基本的には病気ではなく成長の過程ですが、子どもの混乱や行動が激しすぎたり、家庭や学校などの環境調整がうまくいかない場合には専門医療機関への相談もお考え下さい。