一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2025年5月 気象病(天気病)

西川医院
西川 浩子

 雨が降る前だったり、天候が安定しなかったり、台風で気圧が下がったりするときに、頭痛やめまいが起こる、古傷や関節が痛む、体が重い、なんとなく体調が悪い等、様々な不調を感じられることはないでしょうか。それぞれの症状に応じて、診察や検査を受けても原因がはっきりしない、そのような場合は「気象病」の可能性を考える必要があります。
 気象病は気圧、温度、湿度等の影響を受けて起こる体の不調です。症状は人によって様々ですが、よく気象変化の影響を受けやすい症状に、頭痛、関節痛、めまい、ぜんそく、だるさ、気分の不調等があります。また、むくみや胃腸症状などもよくみられます。
男性より女性に多い傾向です。全世代にみられますが、若年者は頭痛、高齢者はめまいや関節痛の症状が多いようです。気象病は、気圧・気温・湿度など、気象の変化によっての自律神経が乱れや、内耳の機能低下等が原因と考えられています。特に、気圧の変化からの影響は大きいようです。
それぞれの症状に対し、専門領域で検査・診断を受けられても原因がはっきりせず、なかなか良くならないとき、東洋医学的アプローチが効果的なことがあります。
 漢方では、人の体を構成し全身をめぐる3大要素として「気」「血」「水」をあげています。これらがバランスよく体内にあり、ぐるぐると滞りなくめぐっていれば健康な状態であるという考え方です。気象病はこのうち特に「水」に関係していると考えられており、水の巡りをよくする方策がとられます。「水」をめぐらせ、「気」のめぐりも改善するような漢方薬で症状の緩和効果が得られることも多いです。漢方薬服薬により、気象に関連した長年の頭痛が改善し頭痛薬を服用する回数が減った、季節の変わり目のめまいが起こりにくくなった等、漢方薬が予防的効果を発揮した例には割と多く遭遇します。
また、もともとの「水滞」体質(体液の分布や流れに問題があり、水分や寒冷の影響を受けやすい体質)の改善のため、生活習慣を変えることも大切です。適度な運動によって「水」のめぐりを良くする、「水」を呼び込み体を冷やすと言われている生野菜、果物等のとり過ぎに注意する、逆に「水」のめぐりを良くすると言われている豆類、瓜類、海藻類、ハト麦を摂る、温泉や入浴などで体を温めて血行を良くすると同時にリラックス効果も得るなど、通常の生活において治療の助けになることもあるものです。
「気象病」の治療法は個人の体質や症状に合わせることが重要です。「気象病」を疑う症状がみられた時は、一度医療機関に相談されてみてはいかがでしょうか。