知っておきたい病気
2025年2月 『慢性便秘症』
うのしま内科クリニック
浦山 直樹
2023年に便通異常症診療ガイドラインが発刊され、便秘の定義などの改訂がありました。
以前は便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されていましたが、今回のガイドラインでは「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」と改訂されました。
便が出しにくくなり様々な症状が出ると、より詳しく明記されています。
そのうえで、慢性便秘症は「慢性的に続く便秘のために日常生活に支障をきたしたり、身体にも様々な支障をきたしうる病態」とされています。
便秘は、単に便が出にくいというだけではなく、放置しておくと心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントが増加し、長期生命予後に影響します。このため適切な治療が必要となります。
慢性便秘症は、一次性と二次性に分けられます。一次性は主に機能性便秘症です。最も一般的で、特に明確な病気が原因でないタイプの便秘です。腸の運動が遅くなることで便が腸内に長時間滞留し、硬くなります。過度なストレス、食生活の乱れ、運動不足が影響を与えることが多いです。
二次性は、
・薬剤性便秘症(抗うつ薬・抗精神病薬やオピオイド(モルヒネなどの鎮痛薬)など薬が原因の便秘)
・症候性便秘症(糖尿病や甲状腺低下症、パーキンソン病などの病気が原因でおこる便秘)
・狭窄性器質性便秘症(大腸がんなどが原因で腸が狭くなることによる便秘)
に分類されます。
便秘症状がある場合は、診察・検査による二次性の便秘となる原因の鑑別を行います。薬剤性であれば薬剤の中止・変更の検討、症候性・狭窄性器質性であれば原疾患の治療が必要です。
特に大腸がんには注意が必要ですので、大腸がん検診を定期的に受け、必要あれば大腸内視鏡検査を受けることを勧めます。
【慢性便秘症(機能性便秘症)の治療】
食物繊維や水分摂取量の不足・運動不足などは機能性便秘症の原因となるので、まずは生活習慣の改善や食事療法を行います。
それで改善されない場合は薬物療法を行います。浸透圧性下剤(酸化マグネシウムやモビコールなど)・上皮機能変容薬(アミティーザ・リンゼス)や胆汁酸トランスポーター阻害薬(グーフィス)などを用います。整腸剤や漢方薬なども併せて用いることもあります。
刺激性下剤であるセンノシド・ラキソベロンなどは耐性や習慣性を避けるために必要最小限の使用にとどめ、できるだけ頓用または短期間での投与にすることが重要です。
重症例では外科的な治療を考慮することもあります。
定期的なフォローアップが長期的な改善につながりますので、便秘で困っておられる方は消化器内科の先生にご相談ください。