知っておきたい病気
2024年4月 「当院における胆石症の治療方針」
セントヒル病院 消化器科
植木谷 俊之
胆石症とは、胆道(胆のう、総胆管、肝内胆管)で、胆汁の成分が析出・凝集し結石を形成した病状です。わが国では成人の10人に1人は、胆石を持っていると言われ、頻度の高い消化器疾患です。胆石は発生部位により、胆のう結石(80%)、総胆管結石(20%弱)、肝内結石(数%)に分類されます。胆石の中で頻度の高い、胆のう結石、総胆管結石に対する当院の治療方針についてお話しします。
胆のう結石は、無症状であることが多く、経過観察が一般的です。右季肋部痛、背部痛、嘔吐などの症状がある場合、胆のう摘出術が推奨されます。また、急性胆嚢炎を合併していれば、輸液、抗生剤治療を行い、胆嚢炎の重症度、基礎疾患、PS(performance status)などを考慮し、緊急で外科治療が可能か判断します。外科治療が困難であれば、胆のうドレナージ(経皮経肝胆嚢ドレナージあるいは内視鏡的胆嚢ドレナージ)を行い、胆嚢炎が改善した後に、待機的胆嚢摘出術が可能か、評価します。
総胆管結石は、総胆管に嵌頓すると、腹痛・背部痛、嘔吐などの症状を来します。また、胆管炎、胆道閉塞を合併すると、発熱、黄疸を認めます。頻度は低いですが、胆石が十二指腸乳頭部に嵌頓すると、膵炎を合併することもあります。総胆管結石の治療は、内視鏡的胆道結石除去術です。総胆管結石は、胆のう結石より、症状を起こしやすいため、無症状でも治療が推奨されます。胆管炎を合併した場合、補液、抗生剤治療を開始し、胆管炎の重症度に応じて、緊急あるいは待機的な内視鏡的胆道結石除去術あるいは、内視鏡的胆道ドレナージを行います。ドレナージ施行例に対しては、胆管炎が落ち着いて、結石除去を行います。膵炎を合併した場合も内視鏡的治療を実施しています。
最後に、胆石症は症状がなければ、経過観察が可能です。しかし、胆嚢炎、胆管炎、膵炎を合併した場合は、合併疾患の重症度、基礎疾患を考慮し、治療方針を決定しています。当院では、消化器内科医、消化器外科医が連携し、患者さんの状態に応じた治療がスムーズに行えるよう心がけています。