知っておきたい病気
2023年12月 アタマジラミ症
宇部市医師会皮膚科医会
久本皮ふ科医院
久本 和夫
アタマジラミとは
人に寄生するシラミには、アタマジラミ、ケジラミおよびコロモジラミの3種類があり、子供たちの間で集団発生するのがアタマジラミです。シラミは、頭髪と頭髪が直接接触した時にうつります。お子さん同士で頭をくっつけあって遊ぶことが多いので、感染率が高くなっています。特に保育園や幼稚園、小学校に通う小さな子供たちの間で流行します。
アタマジラミは、人の頭髪に寄生して、吸血をすることによって，頭皮のかゆみや皮膚炎を引き起こします。成虫は2~4㎜大の灰色の虫で、脚で頭髪にしがみついて動き回ります。卵は１㎜以下白色で、約１週間で孵化します。頭髪にしっかりと付着しており、引っ張ったぐらいでとれません。成虫は頭皮から吸血して生きているので、頭皮から離れ、吸血をしないと3日間で死んでしまいます。
感染の原因
「不潔だから感染した」といわれることがありますが、決してそうではありません。毎日洗髪し、頭皮をきれいにしていても、感染します。アタマジラミに感染している人の頭が、別の人の頭と接触したり、感染している人の身の回りの物（寝具、帽子、タオル、ブラシ）を共用することで、直接アタマジラミが別の人の頭に移動することで感染します。
診断方法
髪の毛に付着している成虫や卵を見つけることで診断できます。肉眼で注意深く見れば発見できる昆虫です。卵は頭髪にしっかりと付着しており、耳の周辺からえりあしかけて多くみられます。卵は白色で、引っ張ても簡単には取ることはできません。
頭にかゆみがあるのに、成虫が見つからず、卵かどうかわからない時は、早期に皮膚科を受診して下さい。顕微鏡でシラミの卵や抜け殻、成虫を確認できれば診断が確定されます。
ここで注意しなければいけないことは、頭髪にヘアキャストといわれる白い物体がみつかることがあります。これは毛包の一部がちぎれて毛根部から外に出てきたもので、シラミの卵によく似ています。ヘアキャストは指でつまんで引っ張ると簡単に取れるのに対し、シラミの卵はなかなか髪から離れず、簡単に識別することができます。
駆除方法
アタマジラミは、集団生活をしていると蔓延しやすいため、見つけた場合には次のように処置を行い、拡大を防ぎましょう。治療には成虫と卵の除去が必須です。残念ながら保険適応のお薬はありません。アタマジラミの駆除には、物理的に除去する方法と薬剤を使用する方法とがありますが、物理的方法でも十分に駆除が期待できます。
①物理的に除去する方法
アタマジラミの除去には洗髪とクシによる方法があります。洗髪をしっかりすることで、成虫や卵をある程度洗い流すことができます。子ども自身による洗髪では、洗い方が不十分になりやすいので、２週間は毎日大人が洗髪してあげましょう。
クシによる方法では、目の細かいクシを使う必要があります。梳き櫛やアタマジラミ専用クシを使うとより効果的です。毎日髪をといて成虫の他に卵を取り除きましょう。
クシでとく際に、成虫が周囲に飛び散らないように準備しましょう。お子さんにレインコートを着せ、ビニールシートを床に敷き、その上に座らせて行うと後片付けがしやすいです。髪をとかし終わったら、シートの上でコートを脱がせ、服をはけで払い、最後にシートの上、床に掃除機をかけておきましょう。
またシーツや枕カバー、タオルのアタマジラミは55度以上の湯に5分以上浸ければ、成虫、卵すべて殺虫できます。
②薬剤を使用する方法
現在シラミの駆除薬として唯一認められているのがスミスリン（パウダー、シャンプー）です。スミスリンは成虫と幼虫を駆除しますが、卵には効果がないので、３日に１度、１０日間使用しないと、駆除することができません。シャンプーは５分間十分外用した後に洗い流します。
ただ最近厄介なことに、スミスリンの効果のないタイプ（耐性を有する）のシラミの出現が報告されており、国内では沖縄を中心に年々増加してきています。このようなスミスリン抵抗性のアタマジラミには、スミスリンシャンプープレミアムの有効性が報告されており、使用をお勧めします。