知っておきたい病気
2022年3月 花粉食物アレルギー(Pollen-Food Allergy Syndrome (PFAS) )
よしもと小児科医院
吉本 裕良
こんにちは。よしもと小児科の吉本裕良と申します。
2月上旬頃よりスギ花粉の飛散が認められるようになり、目のかゆみや鼻水、くしゃみなどの花粉症の症状がではじめた方もおられると思います。そこで今回は花粉症に関する食物アレルギー(Pollen-Food Allergy Syndrome (以下PFASと記載致します))についてご紹介させて頂きます。
原因食物を摂取した後に、主に口のイガイガなどの口腔周囲の症状があり、稀に全身症状に至る現象を口腔アレルギー症候群と呼びますが、PFASは「花粉と関係する主に果物、野菜の摂取によっておきる口腔アレルギー症候群」と定義されています。ここでいう花粉とは、ヒノキ科のスギのみならずカバノキ科(シラカンバ・ハンノキ・オオバヤシャブシ)、キク科(ヨモギ、ブタクサ)、イネ科の花粉もさします。症状のおこる機序としては、まず花粉抗原への感作がおこり、その後その花粉と交差反応をもつ果物や野菜を摂取した際、口のイガイガやかゆみなどの症状を認めるようになります。代表的な抗原はカバノキ科(ハンノキ・シラカンバなど)花粉で、同花粉症のある患者さんの20~40%程度に、交差反応をもつバラ科の食物(リンゴ、西洋梨、サクランボ、モモ、スモモ、アンズ、アーモンド)やマメ科(大豆、ピーナッツ)でPFASの合併が見られます。カバノキ科花粉症といってもピンとこない方もおられるかと思いますが、花粉の飛散時期がスギやヒノキと重なるため、認識されにくく、血液検査をしてはじめてわかる事もあります。その他、イネ科(カモガヤなど)・キク科(ブタクサなど)花粉とウリ科果物(メロン、スイカなど)、キク科(ヨモギ)花粉とセリ科野菜(セロリ、ニンジンなど)の交差反応も報告されています。鶏卵や牛乳などの食物アレルギーと異なり、花粉症の重症化に伴って、それまでは食べれていた果物や野菜で突如として起こる事があります。例えば、去年までは大丈夫だったリンゴが今年に入ってから食べると口の違和感が出てきたという方もおられますし、リンゴ、サクランボ、モモといった感じで、食べると症状の起きる果物が年々増えていく方もおられます。関係する花粉の飛散状況により症状が季節によって変動する事もあります。診断については、病歴や血中特異的IgE抗体価、皮膚テストを参考にしますが、抗原性が加工で変性してしまうため、新鮮な野菜や果物を用いるPrick to prick testが血中特異的IgE抗体価や市販エキスの皮膚テストより有効とされています。治療については、除去が基本ですが、食品の多くはジュースやジャム、缶詰など加工により摂取が可能です。ただ、その果物や野菜がとても好きで除去により食生活のQOLが下がってしまうというお子様に関しては、ご両親の前で少量摂取してもいいですよとお伝えする場合もあります。症状を認めた場合は抗ヒスタミン薬の内服等、必要に応じて治療を行います。根本的な治療としての免疫療法に関しては議論のある所で、シラカンバの免疫療法後にリンゴ摂取による症状が一定期間消失したという報告もありますが、まだ現段階では研究段階の治療になります。生の果物や野菜の摂取により口の症状がある場合は花粉症が原因である可能性があるため、症状でお困りの場合はご相談ください。最後までお読み頂きありがとうございました。