一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2015年2月 尿道炎

清水泌尿器科
清水 芳幸

性感染症(性病)は性行為によって感染する感染症と定義される。代表的な性病としては、男性は尿道炎、さらに前立腺炎、精巣上体炎、女性は子宮頸管炎、更に骨盤内炎症性疾患が多くみられる。その他、男女共通の性病に梅毒、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、トリコモナス症、カンジダ症、咽頭炎、直腸炎、エイズなどがある。本項では男性の尿道炎(淋菌性、クラミジア性、非淋菌性非クラミジア性)について解説する。

(1)淋菌性尿道炎

淋菌はナイセリア属のグラム陰性双球菌で、ナイセリア属は一般に口腔内に存在する常在菌であり、近年オーラルセックスで咽頭に保菌している症例も増加しているとの報告もある。感染後、割合早期に尿道から緑色の分泌液が出て、強い排尿痛がある。

(2)クラミジア尿道炎

クラミジアは細胞内に寄生するグラム陰性菌で、女性性器のみならず男性性器にも無症状で存在する場合もある。咽頭に保菌しているケースも確認されている。少量の白い尿道分泌液が出ることがあり、排尿痛はそれほど強くなく、尿道のむず痒さ程度を感じることが多い。そのため症状の発現まで時間が経過している場合もある。

(3)非淋菌性非クラミジア性尿道炎

淋菌、クラミジアが証明されない尿道炎。マイコプラズマ、ウレアプラズマの可能性が高いが、日本では検査が保険適応されておらず、臨床で検出することは不可能である。

検査

淋菌、クラミジアは尿の核酸増幅法(PCR法など)でかなり高感度で検出できる。従って、女性にクラミジア感染が証明されれば、男性も症状・膿尿の有無にかかわらず検査を行い、感染が証明されれば治療すべきと思われる。

治療

淋菌:セフトリアキソン(ロセフィン)1gの点滴静注が推奨される。スペクチノマイシン(トロビシン)2g筋注は咽頭への薬物移行が少ない。アジスロマイシン徐放製剤(ジスロマックSR)2gの一回投与は保険適応となっているが、世界各地よりアジスロマイシン耐性淋菌の報告が増えており、国内のガイドラインでは推奨されていない。
 
クラミジア:アジスロマイシン1g一回投与、シタフロキサシン(グレースビット)100mg一日一回7日間投与など
非淋菌性非クラミジア性:アジスロマイシン1g一回投与、シタフロキサシン100mg一日1回7日間投与など
治療2週間後に治癒しているかどうか再検査することが望ましい。
尿道炎感染者は粘膜の抵抗が弱くなっているので、エイズにも感染しやすいと言われている。