一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2015年3月 変形性膝関節症

宇部市医師会整形外科医会

50歳を過ぎると60%の人に膝の変形が生じてくると言われ、中高年の人で誘因なく発症する膝痛の多くが変形性膝関節症によるものです。原因は加齢による軟骨のすり減りや、筋力低下に伴う膝関節への直接の負担の増強、それゆえ肥満も大きく関係しています。一旦、発症すると朝、立ち上がる時や階段をおりる時に痛みを感じたり、しゃがみこみが辛くなったりして日常生活の活動性が低下してします。

痛みが続くとあまり歩かないようになり足の筋力が低下し、また肥満になるという悪循環に陥ってしまいます。また、膝が伸ばせないような状態で歩き続けると軟骨のすり減りを早めてしまうだけでなく体の重心が前方に移動し、それを補うため腰も前に曲がるため典型的な老年の人の姿勢になってしまいます。この姿勢も固まってしまうとストレッチや体操をしてもなかなか元に戻すのは困難です。軟骨は消耗品ですので、あまり進行しないうちに対処しなければなりません。

膝の水が溜まり、歩けないほどの痛みが強い時は、消炎鎮痛薬や湿布、サポーターや物理療法、あるいはヒアルロン酸関節内注射などにより、疼痛を軽減する必要があります。消炎鎮痛薬は痛みが軽くなり水のたまりも減らす効果がありますが胃を悪くするなどの副作用もあります。ヒアルロン酸は関節の動きを滑らかにしたり、軟骨のクッション作用をよくしたりしますが、注射治療のみが医学的効果が認められた保健適応です。関節注射は痛みを伴いますし糖尿病のある人などは合併症として感染症に十分注意しなければなりません。

まず重要なのは疼痛の持続する多くの人は肥満であることから、痛みが出だしたら初期のうちにダイエットと運動に取り組むことです。そして、特にカロリー消費のために運動の中に膝周りの筋肉をつける運動を入れて下さい。仰向けに寝た状態で片足をあげる脚あげ運動や、座った状態で膝を伸ばし5秒間止めておく大腿四頭筋訓練などが推奨されています。(図1)

図1(日本整形外科学会ホームページより)

最近は、ダイエット番組がない週はないぐらい多く放送されていますが、治療法が多くあるものほど決定的な治療法はないものです。初めは関節に体重の付加が少ない運動がよいと思います。自転車こぎや水中ウオーキング、太極拳、ヨガなどでも効果がありますので自分が出来そうなものから初めて下さい。

インターネットなどでも多くの運動が紹介されています。そして疼痛が軽減した後も続けて標準体重を維持することが必要です。進行してしまうとヒアルロン酸注射などの効果も期待できなくなり、内視鏡手術や人工膝関節置換術が必要になってしまいます。

旅行に行ったり、ゴルフをしたり快適なシニアライフを過ごすためにも膝の痛みを感じたら湿布を張り続けるだけで終わらせないようにしましょう。