知っておきたい病気
2015年7月 脂漏性皮膚炎
たての皮膚科クリニック
立野 裕晶
頭皮から白い粉状の皮膚片、いわゆるフケがポロポロ落ちて、時にはしつこい痒みを伴うことはないでしょうか?
たいていは汗疹(あせも)や洗髪時のシャンプーやリンスの洗い残しによるカブレのことがほとんどですが、いつまで経っても治らない、軽快してもすぐに再発を繰り返すといった症状で苦しんでいる方は「脂漏性皮膚炎」の可能性があります。
○どんな病気?
頭皮だけでなく鼻や頬、耳の中や後ろなど皮脂の分泌が活発な部位出現することが多く、時には胸部や腋(わき)・背部中央にもできる人も居ます。痒みは無いこともありますが、頭皮からフケがポロポロ、鼻や頬に赤い発疹がポツポツ出現・症状が持続します。
○できやすい性別や年齢は?
女性よりは男性に多く、生後2週~12週の乳児と思春期以降40歳くらいに発症のピークがあり、乳児型の場合では細菌感染などが無いなら生後8ヶ月~12ヶ月くらいまでには自然軽快しますが、成人型は発症すると慢性(いつ完治するか不明なくらい長期間続く)かつ再発性です。
○原因は?
残念ながら、「これだ!」というような明確な原因はわかっていませんが、次に挙げる様々な原因が影響して発症・悪化していると考えられています。
- 皮脂貯留(入浴不足、洗顔不足など)
- 皮脂の多い場所を好むマラセチア菌というカビ(真菌)の増加
- 生活サイクルの乱れ(寝不足など)
- 食事の偏り(高脂肪食・肉食中心、ビタミンB群不足)
- 過度のストレスによるホルモンバランスの乱れ
○治療方法は?
まずは外用剤(塗り薬)を使用開始します。
病気の名前のとおり皮膚の炎症なので、弱いステロイド外用剤から使用して、痒みが強い場合は強いステロイド外用剤に変更します。
また、先ほど説明したようにマラセチア菌というカビ(真菌)が関与していること多いため、最初から抗真菌外用剤も併用する場合があります。症状が良くなってきたらステロイドは外用剤といえども、あまり長期に使用したくないので、調子が良くなれば外用抗真菌剤のみで様子をみていきます。
しかし、実際には症状がなかなか完治せずダラダラと続くので、ステロイド外用剤を完全に休止することが難しく、できる限り弱いステロイド剤を使用しつつ、同時に抗真菌外用剤を時々使用しながら治療を継続することが多いです。
飲み薬(内服薬)は外用剤だけでは治らない強い痒みに対して抗ヒスタミン剤(抗アレルギー薬)を使用するくらいで、治療薬の主役とはなりえません。
また細菌感染を起こしている場合に抗生剤を服用させることがありますが、これも細菌感染が軽快したら、すぐに休止するので、長期的な使用はありえません。
○治りが悪い時は?
実は脂漏性皮膚炎はアトピー性皮膚炎などと同じ皮膚科特定疾患に属しているので慢性・難治性(病気の持続期間は長い)ですが、アトピー性皮膚炎を含む他の特定疾患と比べて、格段に症状が軽く、薬も効きやすい病気です。
そのため、通常は強いステロイド外用剤を使用すると、すぐに治りますが、逆に適切な治療をしても、なかなか治らない時は次に挙げる他の病気の可能性があります。
- アトピー性皮膚炎
- 尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
- カンジダ性間擦疹
いずれも病気の初期段階や転院してすぐの過去の病態を把握できない時では、皮膚科専門医でも判別不能です。
アトピー性皮膚炎は名前くらい聞いたことがある有名な病気ですが、2.の尋常性乾癬は皮膚科専門医が時々遭遇する非常に難治性の皮膚炎、3.は真菌(カビ)の感染による皮膚炎です。
カンジダ性間擦疹は抗真菌剤を根気よく使用することで完治は可能ですが、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬は特効薬やそれに近い治療方法がなく対処療法を続けるのみです。
○日常生活で気をつけることは?
原因のところでも話をしたように、暴飲暴食・睡眠不足など悪い生活習慣が関与していることが多いので、これらを見直し、また入浴もシャワーだけで済まさず、浴槽にゆっくり入って疲れやストレスも皮脂の汚れと一緒に吹き飛ばしましょう。
最近では薬局・薬店で抗真菌薬・ミコナゾール含有のシャンプー・リンスや洗顔石鹸などが販売されています。健康保険の適応でないため値段は少し高めですが、入浴時に使用してみる価値はあります。
このシャンプー・石鹸の使用だけで充分に効果のある人も時々いますが、やはり通院してステロイドや医薬品の抗真菌剤を併用している方が良い調子を維持できている患者が多いです。