一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2015年9月 膵癌について(膵癌の早期発見を目指すには)

うのしま内科クリニック
浦山 直樹

膵癌は最新の統計によると、日本国内の癌の死因において、肺癌・胃癌・大腸癌に次いで第4位となりました。胃癌や肝臓癌による死亡率は顕著に減少傾向にあり、食道癌や大腸癌・肺癌なども減少傾向にあるにも関わらず、膵癌だけは男女ともに増加傾向を示しています。これはいかに膵癌の早期発見が困難かを裏付けるデータでもあるとも言えます。

ところで、膵癌に対してどのようなイメージをもたれているでしょうか。『他の癌に比べてタチが悪い』とか『治らない病気』などのイメージが一般的かと思います。何故そのようなイメージをもたれるかというと、やはり膵癌と診断された時には既に病状がかなり進行しており、手術による根本的な治療が望めないことが多いからだと思います。抗がん剤による治療も日々進歩しており、数年前と比べて延命率が伸びてきているとはいえ、やはり抗がん剤で癌を完全に治療するのは難しいのが現状です。膵癌を手術で治療するには早期発見による診断が必須であるということです。では何故早期発見が難しいのでしょうか。

胃癌や大腸癌などは、内視鏡検査を受けることにより組織検査なども行えるため、診断は容易です。しかし膵臓の場合は、腹部超音波検査でも見えにくい場合が多く、血液検査での腫瘍マーカー計測も、ある程度の相関はあるとはいえ万全ではありません。CTやMRIなどでの画像検査で異常がないかどうかを見ない限りわからない場合が大半です。もし画像検査で異常があったとしても、胃や大腸の内視鏡検査のように容易に組織検査をすることは困難です。超音波内視鏡といった特殊な機器を用いるか、直接手術で確かめるしか方法はありません。特に症状も無いうちから膵臓に病気があるかもしれないと考えることはないでしょうし、画像検査を全員に行うというのも非現実的です。よって膵癌になりやすそうな人は、注意深く観察を行い、適宜検査をした方がよいということになります。いわゆる膵癌のリスクファクター(要因)が何かを知っておくことは非常に重要であるということです。

膵癌のリスクファクターには、膵癌の家族歴がある人、糖尿病・慢性膵炎・IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)・膵嚢胞・肥満・喫煙・大量飲酒などが指摘されています。慢性膵炎・IPMNなどの膵臓に病気が元々ある人は、普段より定期的な通院・検査を受けておられる方が多いため膵癌が発見される可能性は高いです。しかし糖尿病で通院加療をうけられている方が、血糖コントロールが急に悪くなってきたという場合に膵癌が原因である可能性も十分にあるということを認識していただきたいと思います。

また、最近急激に体重が減ってきた人や、胃が悪いから胃薬を飲んでいるけれど症状が改善しない人、心窩部痛(みぞおち付近の痛み)や黄疸が出てきた人など、膵癌の可能性が疑われる症状のある人もなるべく早く病院を受診していただき、検査を受ける事をお勧めします。

癌の早期発見に対する方法も現在研究が進んでいるところではありますが、現実的には個人個人で予防していくしか、まだ方法がありません。健康診断を定期的に受けて頂くことや、何かあれば相談できるかかりつけ医をもつことが、癌の早期発見に必要なことと思います。