知っておきたい病気
2017年8月 妊娠とたばこ
はしもと産婦人科医院
橋本 恭治
妊娠中に喫煙について妊婦本人及び家族に対して禁煙を指導するようガイドライン産科編には書かれています。指導して妊婦本人が喫煙を続ける人は少ないのですが家族のこととなると指導がうまくいかない。外来では妊婦さんから家族に説明してなるべくやめてもらっていただくしかない。しかし、家族は喫煙をやめようとはしない。できることは家庭内での喫煙をやめてもらう程度でしかない。こどもの将来のためにもやめてもらいたい。
妊娠前の女性の喫煙は卵子の老化を加速させ、不妊の原因になることが知られています。
喫煙者の卵子は非喫煙者の卵子と比較して大体5年くらい老化しているといわれています。
妊娠前の夫の喫煙もこどもに影響があります。たばこはDNAに影響するためたばこの影響を受けたDNAがこどもに遺伝することになります。たばこの影響のないDNAは受精の3ヶ月前に禁煙しないとだめだといわれています。妊娠してから子のことを心配する親は多いのですがそうであればなおさら授精前に禁煙をすべきです。妊娠してしまってからでは遅すぎます。喫煙は子宮外妊娠発生率を約2倍高めます。血漿ニコチン濃度が高くなるほど自然流産率が高くなり、ヘビースモーカーの流産率は非喫煙者の約2倍になります。頚管無力症、切迫早産、早産、前期破水、絨毛膜羊膜炎、常位胎盤早期剥離、前置胎盤の頻度を増加させます。児の奇形である口唇裂口蓋裂、先天性心疾患、手足の欠損、腹壁破裂なども増加させます。喫煙本数に応じて出生時体重も減ってきます。受動喫煙でも35~90g出生時体重は減ります。死産率及び乳児死亡率は約2倍になります。出生後は肥満児になりやすく、注意欠陥多動障害(ADHD)になりやすいともいわれています。また、乳幼児突然死症候群(SIDS )にもなりやすくなります。
犯罪者の喫煙率は95%ともいわれます。非喫煙者と喫煙者を比べた場合喫煙者は非喫煙者の3倍犯罪を犯しやすいともいわれます。家庭内で喫煙していると異常な性格の子が多い。あまりにもはしゃぎすぎたり人の言うことを全く聞かない。怒りっぽい。
受動喫煙によって年間1万5千人死亡していると厚生労働省では発表しています。これは考え方が違うと思います。死亡したのではありません。喫煙者に殺されたのです。すなわち喫煙者は年間1万5千人もの人間を殺している。たばこの火の不始末なども含めるとさらに増えます。受動喫煙防止法は考え方によると不要です。喫煙者がきちんとマナーを守って受動喫煙を防止しなければ喫煙者は殺人者と言わざるをえないと思います。
もっとも、禁煙を勧めていくべき団体においてさえも結果的にこの受動喫煙に対して喫煙者を擁護するようなこともありますのでなかなかうまくいかない。世界的にはマナーを守ることで有名な日本人ですがことたばこについてはまったく守れていない。なげかわしいことだと思います。来日したWHOの役員の方もびっくりされていました。マナーを守って欲しいと思います。子のこと家族のことを真に考えれば禁煙するのが当たり前です。
ブータンのようにたばこを売らないような国になればよいと思います。