知っておきたい病気
2019年6月 不眠症
水木神経内科医院
水木 章夫
改元して令和になりました。いろいろな儀式があり、遅くまで起きておられた方も多いと思います。そこで気をつけたいのが不眠症です。不眠と言っても様々な原因があり、治療法も様々です。そこで少し解説いたします。
・原因
まず、不眠の原因には「身体的な問題」「体内時計のずれ」「精神疾患」などがあります。
・身体的な問題
これには、下肢の異常感覚が不眠の原因となるレストレスレッグ症候群、四肢の不随意運動が症状の中心となる周期性四肢運動障害、呼吸障害の睡眠時無呼吸症候群、痛みやかゆみを来す関節疾患や皮膚疾患などがあり、それぞれの原因に応じた治療や対処が必要で睡眠薬は効果が不十分です。
・体内時計のずれ(概日リズム睡眠・覚醒障害)
体内時計が遅れてくる睡眠相後退型と、進んでくる睡眠相前進型があります。後退型は一般成人や高校生など比較的若い人に多く、前進型は高齢者に多く見られます。生活の改善や高照明度光療法、メラトニン受容体作動薬(ロゼレム等)などの治療が主になります。
・精神疾患によるもの
統合失調症,気分障害(うつ病、躁鬱病),不安障害(神経症)、パーソナリティ障害等の精神疾患により起こるもので、まず原因疾患をしっかり治療しながら、平行して睡眠薬(睡眠導入剤等)や精神安定剤の服用を行います。
・治療法
・睡眠時間の決定
一般に不眠症の場合、一日の総臥床時間(床に入っている時間)が延長します。これは眠れないのを補おうとして、早くから就眠し、なかなか起床しなくなりこのため眠りが浅くなり不眠症の悪化や慢性化を来します。このような状態に対しては、目標とする睡眠時間と総臥床時間の工夫が重要です。目標とする睡眠時間を設定し、就床時間、起床時間を設定します。
・睡眠に関する生活指導
- 昼間の悩みを寝床に持っていかなようにする。寝床では、音・光はなるべくシャットダウンすること。アラームをセットして夜中には時計を見ないようにする。毎朝決まった時間に起きるようにする。
- 眠るための飲酒は、寝付きが良くても夜中に目が覚めやすくなるのでやめること。就床前4時間のカフェイン(コーヒー、お茶など)の摂取はやめること。1時間前の喫煙も避けることが必要です。また寝る直前に入浴、熱いものを飲むなど体温の上がるようなことはしない。
・行動療法的アプローチ
まず睡眠と寝床を結び付ける必要があり、そのため寝床では読書やテレビなどは観ないようにし夜中に目が覚めたら別室にゆくのが良い。
また、寝床以外の場所(ソファー等)では睡眠しないことも大切です。
睡眠時間を短めにすることも大切で、特に床に入る時間を遅くし、決まった時間に起床することが望ましいでしょう。
・睡眠薬の使い方
以上のことを踏まえた上で必要なら睡眠薬を服用します。
最近の睡眠薬には、ベンゾジアゼピン受容体作動薬(普通の睡眠薬や安定剤はほとんどこの種類です)、メラトニン受容体作動薬(ロゼレム等)、オレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラ等)があります。
次に服薬時の注意点をお話しします。睡眠薬は就床の直前に服用し、服用後はすぐに就床することが大事です。服用後に起きているとふらつきや、もうろう状態になり危険です。またアルコールと併用してはいけません。寝付けないからと自分の判断で増量してもいけません。いろいろな睡眠薬や安定剤を併用しては依存症になりやすく注意が必要です。
・最後に
不眠で悩む方は多いですが、やたらに睡眠薬を処方してもらう前にきちんと指導できる医療機関に相談してください。「眠れない」と訴えるだけで、すぐに睡眠薬を処方する医療機関もあるので注意が必要です。