知っておきたい病気
2019年12月 熱傷(やけど)
よこやま皮ふ科クリニック
横山 一雄
冬は熱傷(やけど)が増える季節です。
熱傷は皮膚が傷害される深さによってⅠ度~Ⅲ度に分けられます。Ⅰ度は皮膚表面の表皮といわれる部分のみが傷害されたもので、赤みと痛みが出るものの水ぶくれを生じずに、数日以内に傷あとを残さずに治ります。Ⅱ度は表皮の下の真皮と呼ばれる部位まで傷害されたもので、強い痛みと水ぶくれを生じます。真皮のどの部分まで傷害されたかによって、1~2週間で治って傷あとを殆ど残さない場合(浅達性Ⅱ度熱傷)と治るまで2~3週間以上かかり傷あとが残ってしまう場合(深達性Ⅱ度熱傷)があります。Ⅲ度は皮膚の全層が傷害されたもので、治ってもひどい傷あとを残すもので、多くの場合は手術が必要です。Ⅱ度以上の熱傷は医療機関を受診する方が良いと思われます。熱傷を負った場合はまずは流水や保冷剤などで十分に冷やしましょう。水ぶくれが生じた場合は医療機関を受診することをおすすめします。すぐに水ぶくれを生じないこともあるので、症状が軽いと思っても受診する方が安心です。
熱傷を生じる主な原因としては次のようなものがあります。
- 火炎によるもの
- 熱湯や熱せられた油などの熱い液体によるもの
- 熱せられた金属(鍋やフライパン、暖房器具など)によるもの
- カイロや湯たんぽなどに長時間接触することによるもの(低温熱傷)
- 蒸気などの熱い気体によるもの
- 化学物質(酸、アルカリ、石油製品など)によるもの
- 電撃によるもの
これらの中で冬に増えるのは主に② ③ ④ですが、特に注意していただきたいのが④の低温熱傷です。比較的低温の熱源が長時間接触して生じる熱傷で、皮膚の非常に深いところまで傷害され、Ⅲ度の熱傷になることもまれではありません。予防がとても重要です。カイロは数枚重ね着した衣服の上から当てるようにし、決してカイロを当てたまま寝ないこと。コタツの中、電気カーペットの上やストーブなどの暖房器具の近くで寝ないこと。湯たんぽや電気アンカは予め布団を温めるために使用し、就寝時には布団から出して寝ること。低温熱傷は高齢者の方に多くみられますが、最近は若い女性が湯たんぽを使用して下腿に低温熱傷を負ってしまう例が増えているように感じます。一生残る傷あとになる場合が多いので特に気をつけてください。
⑤の蒸気による熱傷は特に小さなお子さんのおられるご家庭で注意が必要です。ポットや炊飯器から吹き出す蒸気に興味をひかれて手をかざしてしまうお子さんも多く、蒸気は熱湯よりも高温のため、まだ皮膚の薄い小さなお子さんは非常に深い熱傷になってしまい、熱傷が治った後に指の動きが悪くなってしまうこともあります。ポットや炊飯器は乳幼児の手の届かない場所に置きましょう。
⑥の化学物質による熱傷は物質の種類によって対処の方法が異なりますので,必ず医療機関を受診するようにしましょう。
熱傷は受傷時の適切な対応が必要ですが、予防もとても重要です。一生後悔することにもなりかねませんので、十分に注意してください。