一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2020年3月 チック

とみた小児科医院
冨田 茂

チックとは意思で動かせる筋肉が、突然、意思とは関係なく(不随意的)、反復して動くもので、体のどの部位でも起こりうる。チックの種類には運動性チックと音声チックがある。発症は、男子に多く、発症時期として幼稚園や学童期に多い。一か所のことも、数か所のことも、同時に現れることもある。経過中に、次々と部位が変わり、移動することもある。緊張すると増強するが、心理的に何かに集中していると消失することが多い。あらゆる場合において、睡眠中は症状が消失するのが特徴である。

チックは子どもが社会に参加し始める年齢に出現しやすいので、保護者や周りの者たちが心配して受診することが多い。子供自身は別に気にしていない事もあるので、親の不安、心配がどの程度なのかにも配慮しなければならない。また、子供自身が「恥ずかしい」「気になる」「自分は駄目だ」などという気持ちをどの程度抱いているか、またいじめられたり、逆に周囲に迷惑を掛けたりしていることがあるかどうかなど、総合的な判断をして治療方針を立てるべきである。保護者には心配がないことをよく説明し、親子の不安を除き、「気にしないように」指導する。子供が放任されているような場合には「親の注意を引きたいのかもしれない」と説明し、子供のそのような思いへの注意を親に喚起させる。子供の性格傾向は完全癖や強迫性があり、それに経験不足からくる社会性の未熟さが加わるが、多くの場合は家庭、親、社会、学校などの環境からの過剰期待がみられる。

子供の性格で、「神経質な子だから」と単純に環境からのストレスを軽減させる事を考え、親が過保護(防波堤)になると、子供の性格傾向を更に強化してしまうことがあるので注意したい。治療としては、親子関係を整えることも重要となるし、子供に対しては自立を促す治療が必要になってくる。診断には、表現力の拙さを遊戯療法や箱庭療法、絵画療法で表現させるようにする方法や、子供の性格をみる性格テスト、親子の距離感をみる親子関係テストなどを参考にするといい。それと同時にチックの背景にある疾病にも注意を払う必要がある。

現在では、チックは、一時的または部分的であれば、しばしば随意的抑制が可能であることや、チックの出現前にやらずにいられないとか、ムズムズするという感覚(前駆衝動)を伴う場合がある事から、不随意運動とは言い切れないと考えられるようになってきている。好発年齢があることや、しばしば家族集積性を認めることから、本人の生物学的特性が想定されるようになってきた。

一方で、十分な治療を必要とするものに、Gilles de la Tourette(ジル・ド・ラ・トゥレット)症候群がある。この疾患はチックの重症型と考えられている。全身性・多発性のチックに、汚言(コプロラリア)(母親に「くそばばあ」と繰り返し言ったり、性器の名称や性的な言葉を発したりする)を伴うものをいう。皮質―線条体-視床―皮質回路の異常が想定されて、強迫性障害や注意欠陥・多動性障害(ADHD)とも共通する面があるとされる。症状が強く子どもも周囲も困る事が多いので、薬物療法(ハロペリドール、ピモジド)でまず症状を止めることが必須となる。