一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2020年11月 飛蚊症

浅山眼科
浅山 展也

飛蚊症(ひぶんしょう)は病気の名前ではなく、症状の一つです。蚊が飛ぶ症状と書くように、視界の中に虫が飛んでいるように見える症状を指します。生理的飛蚊症と呼ばれる心配のないものと、病的飛蚊症と呼ばれる異常なものがあります。
飛蚊症は軽度のものを含めば、ほとんどの人に見えるものです。点状のものや、繊維状のものなど、実際には形や濃さは様々です。高齢者や近視の強い人に多く見える傾向があります。

飛蚊症の原因は硝子体の濁りです。硝子体は眼球の中にある生卵の白身のような物質です。生まれつきわずかな濁りがある場合があります。加齢により硝子体が収縮し、液体の部分ができます。それに伴い、濁りができることもあります。硝子体の収縮が強くなると、硝子体が網膜から剥がれていきます。硝子体は網膜と軽く癒着していて、後方部分の硝子体が剥がれることを後部硝子体剥離と言います。この時、目立った濁りができることがあります。濁りが出なくても後部硝子体剥離は、ほとんど人に起きます。60代前半によく起きると言われていますが、近視が強い人では早く起きます。このような飛蚊症は生理的飛蚊症と呼び、病的なものではありません。
しかし、硝子体が網膜から剥がれる時に、網膜も剥がれてしまう場合があります。血管を引っ張って出血することもあります。この場合は視力障害を起こすことになります。
また、目の中の炎症や血管の病気でも濁りを生じます。糖尿病や高血圧などの全身疾患から血管の異常を生じ、出血する場合もあります。このような原因で起きる飛蚊症を病的飛蚊症と言い、治療が必要です。

飛蚊症が生理的なものなのか、病的なものなのかは、個人ではなかなか判断がつきません。判断するためには、目の中を覗いて調べて見なければわかりませんが、かなり前から見えていて変化がないものは生理的飛蚊症である可能性が高いと考えられます。突然、飛蚊症が見えるようになった場合や、急に数が増たり、いつもとは違う場合にはすぐに検査すべきです。網膜剥離の場合は数日単位で進行することが多く、早期に発見できれば入院手術をしなくとも、レーザー治療で食い止めることができる場合もあるからです。また暗い所で一瞬、光が見える症状(光視症)なども網膜が引っ張られている疑いがあり、検査が必要です。
目の中を詳しく調べる検査は、点眼薬を用いて瞳孔を開く必要があり、通常30分程度かかります。検査後、開いた瞳孔が元に戻るのに数時間を要します。瞳孔が開いた状態では焦点が合わず、眩しくなます。そのため、両眼の検査をする場合や、もう一方の目の視力が悪い場合など自分で運転して帰れない場合があります。

飛蚊症は誰にでも見える可能性がありますが、いつもと違う場合には、すぐに眼科を受診する必要がある症状です。特に60歳前後の人や、近視の強い人、糖尿病の人、他にも目の症状がある人は注意が必要です。自分では判断の難しい症状ですので、不安な場合には検査を受けてください。