一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2026年9 大腸がんの基礎知識と症状・検査・治療について

宇部中央病院 外科
小佐々 貴博

①はじめに

大腸がんは、日本で罹患数の多いがんの1つであり、結腸がんと直腸がんに大別されます(図1)。国立がん研究センター「がん情報サービス」の統計によると、2023年に新たに大腸がんと診断された患者数は約15万人、がんによる死亡数は男性で第2位、女性で第1位となっています。高齢化や食生活の欧米化などを背景に患者数は年々増加しており、我が国においても重要な疾患の1つとなっています。大腸癌治療ガイドラインによると、ステージ別の5年生存率(表1)は、ステージ1で93.1%、局所進行のステージ2で76.4~88.3%、リンパ節転移を伴うステージ3で65.8~91.5%、遠隔転移を有するステージ4では26.7%と報告されています※1。このように、大腸がんは早期に発見・治療することで高い治癒率が期待できる一方、進行した状態で発見されると、予後は非常に悪くなります。そのため、定期的な検診や症状がある際の早期受診が重要です。


表1:結腸がんと直腸がんとステージ毎の5年生存率(大腸がん治療ガイドライン2026年版より抜粋)

②大腸がんの症状

大腸がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどないことも少なくありません。しかし、病気が進行すると、血便、便秘や下痢を繰り返す、便が細くなる、腹痛、腹部膨満感、貧血、体重減少など、さまざまな症状が現れるようになります。特に若年者や働き盛りの世代では、「痔による出血だと思っていた」「仕事が忙しく受診を先延ばしにしていた」といった理由で、受診が遅れてしまうこともあります。症状を放置すると、がんが進行し、腸閉塞や大量出血、さらには腸に穴が開く穿孔などを来し、緊急手術を要する Oncologic emergency(腫瘍緊急)に至る場合があります。そのため、血便や便通異常などの症状が続く場合には、年齢にかかわらず早めに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが重要です。

③大腸がんの検査・診断

大腸がん検診では、まず便潜血検査が行われます。便潜血検査は、便に混じった血液を検出する検査であり、自覚症状のない早期の大腸がんを発見するために用いられています。2022年度の全国集計では、便潜血検査で陽性となった人の約2.5%から大腸がんが発見されており、陽性と判定された場合には放置せず、精密検査を受けることが重要です※2。精密検査としては下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)が行われ、大腸の粘膜を直接観察するとともに、必要に応じて組織を採取して病理診断を行います。さらに、内視鏡検査で手術が必要な大腸がんと診断された場合には、CT検査やMRI検査などにより、リンパ節転移や肝臓・肺などへの遠隔転移の有無を評価し、ステージを決定します。これらの検査結果を総合的に判断し、患者さん一人ひとりの病状に応じた最適な治療方針が決定されます。

④大腸がんの治療

大腸がんの治療法は、がんの進行度や病状に応じて選択されます。早期の大腸がんでは、手術を行わずに内視鏡治療のみで根治が期待できます。一方、進行した大腸がんでは手術が治療の中心となります。従来は開腹手術が一般的でしたが、現在では傷が小さく体への負担を軽減できる腹腔鏡手術や、より繊細な操作が可能なロボット支援手術が広く普及しています。これらの術式により、術後の痛みの軽減や回復の早期化、生活の質(QOL)の向上が期待されています。さらに、ステージ2(再発リスクが高い場合)やステージ3では、再発予防を目的として手術後に行う術後補助化学療法が推奨されます。術後補助化学療法には再発リスクを約20~30%低減する効果が期待されています。ステージ4である切除不能大腸がんや再発大腸がんに対しては、薬物療法が中心となります。薬物療法とは、抗がん剤や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤のことをいいます。薬物療法を行わなかった場合の生存期間中央値は約8か月と報告されている一方、薬物療法を行った際の生存期間中央値は30か月を超えるまで延長しています。近年新しい治療法が次々に導入され予後が改善されつつあります。また、薬物療法が腫瘍の減量、縮小につながり治癒切除が可能となることもあります。

腹腔鏡手術(左)とロボット支援手術(右)

⑤さいごに

大腸がんは、早期に発見し適切な治療を受けることで、十分に治癒が期待できる病気です。血便や便通異常、腹痛など気になる症状が続く場合には、年齢を問わず早めに医療機関を受診しましょう。また、自覚症状がない場合でも、定期的に大腸がん検診を受けることが早期発見・早期治療につながります。大腸がんは決して珍しい病気ではありません。しかし、正しい知識を持ち、検診を受けることや症状を見逃さず早めに受診することが、治療成績の向上につながります。本稿を通じて大腸がんを身近な病気として理解していただき、検診や早期受診のきっかけとなれば幸いです。

引用
※1)大腸癌治療ガイドライン 医師用 2026年版
※2)日本消化器がん検診学会大腸がん検診精度管理委員会. 2022年度大腸がん検診全国集計成績. 日本消化器がん検診学会雑誌. 2026;64(2):195‒229.