一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2026年8月 加齢性難聴

きわらクリニック耳鼻咽喉科
緒方 洋一

<加齢性難聴とは>

 加齢性難聴は老人性難聴とも呼ばれます。年齢を重ねるとともに、徐々に進行する聴力低下のことを言います。個人差はありますが、だいたい50歳代から徐々に難聴が始まってきます。高音から聞こえにくくなり、年齢が上がってくるに連れて進行してきます。加齢性難聴は60歳代前半では5人~10人に1人くらい、60歳代後半では3人に1人くらい、75歳以上になると7割以上の人に起こると言われています。

<加齢性難聴の原因と悪化要因>

 加齢性難聴は、音を感じる細胞が年齢とともに壊れていくことによって起こります。音を感じる細胞は一旦壊れると、もう再生することはありませんので、加齢性難聴が治ることはありません。残念なことですが、治療法もありません。
 加齢性難聴を悪化させる要因として、糖尿病、動脈硬化、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病や、喫煙、過度の飲酒、騒音などがあります。生活習慣病を見過ごすことなく治療を受け、喫煙や飲酒の取りすぎなどに注意して下さい。これで難聴が治ることはありませんが、進行を遅らせて、聞こえない不自由な生活をなるべく送らないようにして下さい。

<高齢者の聞こえ方>

 高齢になると、どのような聞こえ方をするのかというと、1)低い音より、高い音が聞こえにくくなります。2)小さな音は聞こえにくく、大きな音は逆にうるさく感じるようになりますので、耳元で大声で話されると、うるさいだけで何を言っているかわかりません。3)耳がこもったように、音がはっきりと聞こえにくくなります。4)音は聞こえても、話の内容がはっきりとわからなくなります。5)早口で話されたり、周りに雑音があったりすると余計に聞こえにくく感じます。そこで高齢者の方には、正面から、相手の目を見て、大声ではなく、少し大きめの声で、大きく口を動かして、ゆっくり、はっきりと話すようにして下さい。

<加齢性難聴による日常生活への影響>

 加齢性難聴になると日常生活にいろいろな影響が出てきます。
1)外出時に危険に逢いやすい昨今ではハイブリッドや電気自動車が増えていますので、以前のような自動車のエンジン音が聞こえにくくなりました。屋外で周りの車の音が聞こえないために、事故にあうことがあります。
2)災害時に警報が聞こえない災害警報が聞こえず、逃げ遅れて、災害に巻き込まれる恐れがあります。
3)家族や友人とコミュニケーションがうまくとれない特に家族とは遠慮がないため、ケンカになってしまいがちです。
4)人と話をすることに自信が持てないそのために人との交流を避けるようになることがあります。
5)社会的に孤立し、うつ状態になることがあります
6)認知症を引き起こしやすくなります
今日では認知症患者の約9%は難聴が原因で発症したものと考えられており、難聴は認知症の大きな危険因子であると言われています。

<認知症のリスクと予防>

正常な聴力では耳からの情報が脳に伝達され、脳神経が活発に活動しますが、難聴があると、耳から脳に伝わる情報が少なくなるため、脳神経の活動が減り、脳がだんだんと萎縮してしまいます。軽度難聴の方では正常聴力の方と比較すると、認知症発症のリスクは約2倍、中等度難聴の方では約3倍にも上がると言われています。「もう年だから」と言って、難聴を放置せず、難聴が進んでいるなら、補聴器を使って人に会い、人とお話をして、脳を活性化して下さい。それが認知症発症の予防につながります。

<難聴のセルフチェック>

難聴のセルフチェックをしてみましょう。自分に当てはまる数が多ければ、耳鼻咽喉科に行って診察を受けることをお勧めします。