一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2026年1月 脚のむくみ・慢性静脈不全症

かわぞえクリニック
善甫 宣哉

 米国トランプ大統領が脚のむくみがあり、大学病院を受診して慢性静脈不全症で良性であったという記事が発表されました。
慢性静脈不全症とは、脚のむくみ、色素沈着、皮膚硬化や皮膚潰瘍をきたす病気です。慢性静脈不全症には深部静脈不全症と表在静脈不全症(下肢静 脈瘤)ならびに血栓後症候群の3種類があります。

原因:

動脈は、酸素を含んだ赤い血液が心臓から全身に送られる血管です。静脈は、全身から心臓に戻っていく青い血液が通る血管で、脚では深部静脈と表在静脈があります。ふくらはぎの筋肉が収縮すると、深部静脈を流れる血液が押し上げられ、筋肉ポンプと言います。さらに静脈には一方通行弁が何ヶ所もあり、心臓へ向かう上方向へは血流が維持されますが、下方へ向かおうとすると一方通行弁が閉じて逆流を防ぎます。慢性静脈不全症は何らかの理由で脚の静脈が拡張するか、一方通行弁の損傷により発生します。その原因は、過去の深部静脈血栓症、加齢、肥満、長時間の立位、妊娠などがあげられます。

症状:

寝ている時には脚のむくみは感じられませんが、長時間の立位や長時間飛行機に乗って外国へ行った場合では正常の人でも脚がむくみます。むくみがひどくなると赤血球の中にあるヘモグロビンという酸素運搬装置が血管外に滲み出て、酸化するとヘモジデリンになり、鉄さび色に色素沈着します。さらに、皮膚硬化がはじまり、これを放置すると静脈うっ滞性潰瘍が発生することがあります。

診断:

上記症状と脚の静脈の超音波検査により診断されます。プローブを圧迫することにより深部静脈血栓症がないことを確認します。さらにduplex超音波検査で一方通行弁の逆流の有無を確認します。

治療:

夜間の下肢挙上と弾性ストッキング装着の指導を行います。圧迫圧は30mmHg以上を勧めます。静脈うっ滞性潰瘍がある場合は、弾力包帯を巻き ます。潰瘍が治癒し始めたら弾性ストッキングを装着します。

 膝窩静脈より中枢側に深部静脈血栓症がある場合は、抗凝固療法が必須となります。また、ふくらはぎのマッサージは禁忌です。胸部CT検査で肺動脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)の有無を確認する必要があります。血栓ができると、それに起因する瘢痕組織により一方通行弁の損傷が起こり、抗凝固療法により血栓が消失しても、症状を伴う慢性静脈不 全症である血栓後症候群が発症することがあります。
 慢性静脈不全症に良性、悪性はありません。しかし、命にかかわらない病気という意味では良性です。深部静脈血栓症は肺動脈血栓塞栓症を併発することがあり、命に関わる可能性があるという意味では悪性です。