一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2024年5月 男性更年期障害

わだ泌尿器科クリニック
和田 尚

 この病気、聞かれたことがありますか?40歳以上の男性で近ごろ〝やる気が出ない、体力が落ちた、イライラすることが増えた〟という方はこの男性更年期障害かもしれません。以前、NHK「ためしてガッテン」で、働き盛りの男性を襲う〝謎の不元気症候群〟として紹介されましたが、一般の病院でいくら検査しても〝異常なし〟の方、〝うつ病〟と診断されて治療を受けても良くならない方はこの病気の可能性があります。今までは男性更年期障害(正式名称:LOH症候群/加齢性腺機能低下症)の治療は注射のみでしたが、最近新しく塗り薬も開発されましたので、併せてお話させていただきます。

①どうして起こる?

 〝加齢〟と〝ストレス〟によって、男性ホルモン(テストステロン)が低下することで発症します。精巣で作られるテストステロンは代をピークに〝ゆるやかに〟減っていきますが、仕事や家庭でのストレスが長期間続くと、脳から精巣に指令が出なくなり、テストステロンが〝急激〟に減ります。この急な減少に体がついていかずに、様々な不調が現れます。現代のストレス社会では、40歳以上の男性の6人に1人が男性更年期害予備群と言われています。ちなみに、閉経前後の10年間に発症する女性の更年期障害と違って、男性更年期障害では40歳代以降に始まりますが、テストステロンの低下する期間や程度に個人差が大きいため、60歳や70歳になってから発症し、長期にわたって不調が続くこともあります。

②どんな症状?

・やる気が出ない、不安感がある
・疲れやすく、よく眠れない
・イライラして、怒りっぽくなる
・記憶力や集中力の低下
・ほてり、のぼせ、多汗・筋肉が落ちて、内臓脂肪が増加
・性欲、勃起力の低下

③何科を受診すれば良い?

 泌尿器科専門医を受診して下さい。最新の塗り薬が処方可能な〝テストステロン治療認定医(日本メンズヘルス医学会)での治療がお勧めです。

④どうやって診断する?

 血液検査(男性ホルモン/テストステロンの測定)と問診(上記のような症状があるか?)のみで診断できます。日本メンズヘルス医学会から発表された新しい診療ガイドライン(2022年12月改訂)に従って総テストステロンと遊離テストステロンを測定し、その値が基準値以下(それぞれ250ng/㎗未満、7・5pg/㎖未満)および今の症状とで総合的に判断します。

⑤治療およびその副作用は?

 男性ホルモン補充療法(注射または塗り薬)。
(1)注射:男性ホルモン製剤を2~3週ごとに筋肉注射。
(2)塗り薬:従来の市販薬では効果が不安定なため、日本メンズヘルス医学会が、一日一回の塗布製剤である5%テストステロン皮膚外用剤(1 UPフォーミュラ)を開発しました。厳格な管理の元で効果を発現しますので、テストステロン治療認定医(日本メンズヘルス医学会ホームページに掲載)のみでしか処方できません。また、ホルモン補充療法の副作用は「前立腺がんや前立腺肥大症の病状進行、多血症、肝機能障害」などです。治療前に必ず血液検査(PSAや赤血球数等)やエコー検査でのチェックが必要です。更に治療開始後も定期的な検査を行っておけば、早めに副作用も十分把握できますので、男性ホルモン補充療法は非常に安全な治療法と言えます。
 上記のような症状があってご心配な方は、泌尿器科専門医への受診をお勧めします。実際、男性ホルモン補充療法によって、休職中の方が仕事復帰できたり、定年後に引き籠っていた方がまた趣味を始めたりと、〝謎の不元気〟を解消される方が多数おられます。