一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2023年10月 骨粗鬆症

東整形外科
東 良和

はじめに

 昨今、健康志向は高まり、心筋梗塞、ガン、脳血管障害などの重大疾患にならないために、糖尿病、高血圧などの生活習慣病に気を付けられている方は多いと思います。対して、骨粗鬆症への関心はいかがでしょうか?
 日本人の平均寿命が延びていますが、健康寿命との差は開きがあります。令和元年、男性平均寿命81.41歳、健康寿命は72.68歳で、女性平均寿命87.45歳、健康寿命75.38歳です(厚生労働省 簡易生命表)。健康寿命と平均寿命の差は、男性8年以上、女性10年以上あり、社会問題の一つになっています。骨折転倒は、要介護になる原因の3位で(1位認知症、2位脳血管疾患)(2019年厚生労働省検査結果)、健康寿命低下の大きな要因になっています。骨粗鬆症による代表的骨折に、大腿骨近位部の骨折があります。本骨折はたとえ高齢であっても、骨折前の歩行能力再獲得を目指して、手術的治療を行うことが一般的です。現在、手術治療方法は確立し、術後成績はかなり向上しています。それでも、骨折後は歩行能力低下することが多く、46%が骨折1年後に歩行できなくなり、33%が1年後に介護施設に入所しています。また驚くことに、本骨折は生命予後にも大きく影響していると言われています。大腿骨近位部骨折1年後の死亡率は20%です。悪性腫瘍でも、1年後の死亡率は20%超えることは少ないです。大腿骨近位部骨折を減らすことができたら、平均寿命も健康寿命も延びることになりますが、残念ながら本骨折は年々増え続けています。本骨折を減らすことは、より重要な課題の一つです。

そもそも骨粗鬆症とは?

骨粗鬆症は、骨強度が低下し、軽微な外傷でも骨折する可能性がある状態です。女性ホルモン低下による骨粗鬆症(閉経後骨粗鬆症)は有名ですが、副甲状腺機能亢進症、アルコール多飲、生活習慣病、長期臥床などによる荷重不足でもおこります。女性だけでなく、男性にも起こりえます。骨強度は、主に①骨密度と②骨質で規定されます。骨粗鬆症検査は、一般的に骨密度の測定を行います(現段階で骨質の測定は、難しいです)。骨密度は大腿骨、腰椎で測定することが望ましいと言われていますが、簡易的に手や踵で行うこともあります。骨密度値が若年成人平均値と比較して70%以下になると、年齢を問わず骨粗鬆症の診断基準を満たします。

骨粗鬆症の治療

 骨粗鬆症と診断されたら、その原因に対する治療が必要になります。生活習慣病や運動負荷不足が原因なら、これらを改善する必要があります。女性ホルモン低下、ビタミンD不足、骨形成の低下、骨吸収の増加など、なかなか自身で改善できないものに対しては薬物治療が必要になります。薬物治療薬は、開発が進んでおり、さまざま種類があります。医師はそれぞれの病態にあった薬物を選択します。いずれにしても治療は短期では終わりません。今後の長い人生、骨折予防のためにも骨粗鬆症治療の長期継続が大切になります。

最後に

 骨粗鬆症予防・治療は、整形外科だけでなく、他科の先生方と協力しながら行っていく必要があると思っています。宇部市民の皆様が、すこしでも、より健康に長生きできるように力添えできたら嬉しく思います。