一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2023年3月 日光(紫外線)による光老化

今村皮ふ科形成外科
今村 太一

かつては子供は風の子、外で裸足で走り回って肌はこんがり焼けてこそ元気な子供、色白のもやしっ子は元気のない子供というようなイメージがありました。しかし本当にそうでしょうか?そもそも日光は何かというと赤外線、可視光線、紫外線という様々な光が織り交ざったものです。赤外線は熱を、可視光線は光を我々に与えてくれます。紫外線は我々の骨に大切なビタミンD3を作ってくれます。それだけなら日光って良いものだねと言えるのですが、近年困ったことが分かりました。
 私も職業柄色々な方にどうやったら老けないか?ということをよく聞かれます。実はこの肌老化の原因のうち年齢によるものはわずか20%に過ぎないことが分かりました。それでは残りの原因80%は何でしょうか、それが紫外線による老化=光老化であることが分かってきたのです。つまり肌年齢の多くは紫外線を浴びすぎることによって生じている可能性が高いのです。ところで秋田美人という言葉や韓国は色白で美肌が多いということを聞かれたことはないでしょうか?実は秋田やソウルなどは緯度が高く日照時間が短いため相対的に紫外線を浴びる人が南の人間より少ないということが分かっています。おそらく紫外線の少なさから肌年齢が若いために生まれたイメージではないかと思われます。
 では紫外線を強く浴びると何が悪いのかというと、①肌のハリを保つコラーゲンを破壊してシワ・たるみを作ること②肌を黒くしてシミを作ることの2つに大きく分かれます。逆に言うと紫外線を避けると将来的にシワ・たるみが少なくなり、シミも少なくなるということが言えます。シワを作る紫外線をUVA、シミを作る紫外線をUVBと言います。更に困ったことに見た目だけではなく、将来的に皮膚癌の原因にもなってしまいます。
 じゃあどうしたら少しでも紫外線を避けられるのでしょうか。一般論でいうと午前10時から午後2時という紫外線が強い時間の外出を避ける、日傘、帽子、衣服で覆うなど物理的に日光をよけることが言えます。しかし一番大切なのは日焼け止めをしっかりと使うということです。
 使うためにはまず日焼け止めについて知る必要があります。日焼け止めには必ずパッケージにシワを作る紫外線=UVAを防ぐPAとシミを作る紫外線=UVBを防ぐSPFという数値がかかれています。PAは+から++++まで、SPFは10から50+までの幅があり数値が増えるほど紫外線から身を守る効果が高いと言われます。どのくらいの値を目安にするかは図を描きましたので御参考にされてください(大体PAが高いものはSPFも高く、PAが低いものはSPFも低いことがほとんどです)。注意が必要なこととして、曇りや雨で太陽が直接見えなければついつい何もしなくてもいいかもと思いたいところなのですが、晴れの日と比較して曇りの日では60%、雨の日でも30%の紫外線は浴びていると言われており、曇りだからと言って極端に手を抜くのはやめた方がよさそうです。そして塗り方にも気を付けないといけません。とある調査にて、多くの場合一般の方が塗っている日焼け止めの厚みは、実際に日焼け止めの効果が出る厚みの半分以下であるということが分かってきました。日焼け止めを使っているよと言う人も、これから使ってみようかなと言う人も可能ならば思っているより厚塗りをするか二度塗りをするのが良いかもしれません。更に、汗などの色々な刺激で日焼け止めはだんだん取れてしまうため2-3時間おきに塗りなおす必要があるとされます。午前に塗ったからと言って1日大丈夫と言うわけではないので、1日外に出るときは午前と午後に塗り替える必要があるのですね。
 ただし、紫外線を恐れて光を全く浴びないというのも骨の成長に関わるビタミンDが足りなくなるため良くありません。ではどのくらい紫外線を浴びるべきなのでしょう?日焼け止めを塗らない場合で子供では手の甲に15分程で良いとされ、東京においては8月1日で3分、1月1日で50分が目安ともされます。あまり極端に気にしすぎることはなさそうです。
 しかしいくら言われても、もう若くないし・・・と思われる方も多いでしょう。確かに若いころにすればするほど良いのですが、いつから始めても今から肌年齢が更に悪くなるのを防ぐことができます。紫外線予防に早すぎる遅すぎるはないのです。是非今からでも対策をとっていただくと良いのではないかと考えます。