一般社団法人宇部市医師会

知っておきたい病気

2022年10月 骨粗鬆症について一言

いそべ整形外科医院
礒部 淳一

 骨粗鬆症とは、骨の量が減って、骨が弱くなり、骨折をしやすくなる病気です。
 以前は加齢の一つだから仕方ないで済ませていた時代もあったようですが、間違いなく予防、治療が出来る病気の一種です。
 身近な方が段々と背が縮んできたり、腰が曲がってきたりしていく事を見てきた方も多いかと思います。それは骨粗鬆症が原因となっていることが多いです。
 日本は超高齢化社会を迎えており、全人口の10%である約1300万人の骨粗鬆症の患者がいると言われています。65歳以上の女性に限ると約半数の方が骨粗鬆症です。ただ、女性の方だけではなく、男性も多く、骨粗鬆症の患者の1300万人の内約300万人が男性です。
 男性にも女性にも多い疾患ながら、実際に治療を受けているのは7人に1人だけです。結果として、骨粗鬆症が原因とする骨折の日本での発生数はいまだに上昇していているとも、啓蒙活動の結果、治療の強化が行われ、ようやく減少に転じたとも言われています。ただ、寝たきりの原因となりますので、積極的な診断、治療が必要になる非常に大事な疾患です。
 けれども、寝たきりという重篤な状態を引き起こすきっかけとなる病気であるという認識が一般的に非常に希薄な疾患でもあります。これは患者本人だけでなく、医療者側も重要な疾患であるという認識が甘いと感じられます。
骨粗鬆症になり、骨折をすることで日常生活動作を困難にし、生活の質を低下させ、要介護、寝たきりの原因になります。そうなると、本人にとっても苦しいことですが、介護する家族の方にとってもケア、対応は大きな負担になります。脊椎圧迫骨折、大腿骨近位部骨折を受傷した方の健康寿命は低下し、生命予後も非骨折者に比べて不良です。一旦骨折を起こすと更なる骨折=骨折連鎖を来すリスクが高くなります。人生を左右する重篤な疾患なのです。
 骨粗鬆症になっても骨折がない限り痛みはほとんどありません。しかし、軽微な転倒で骨折するようになりますし、原因がはっきりせずに骨折を引き起こすこともあります。
 骨折を生じやすい部位は背骨(脊椎圧迫骨折)、手首(橈骨遠位端骨折)、足の付け根(大腿骨近位部骨折)などで、その他の部位も骨折しやすくなります。特に足の付け根は歩行が出来なくなるため、特に寝たきりのきっかけになりやすい骨折であり、骨粗鬆症の治療の最大の目的は足の付け根の骨折、大腿骨近位部骨折を防ぐことと言えます。
 骨は同じように見えても骨形成(新たに骨が作られる)、骨吸収(骨を溶かして壊されていく)のバランスで成り立っています。しかし、バランスが崩れ、骨吸収が進むことにより骨がスカスカになり、骨折しやすくなります。
 骨粗鬆症は、女性、特に閉経後に多くみられますが、前述の通り、男性でもみられます。加齢だけでなく、内臓疾患、糖尿病などの生活習慣病、関節リウマチ、ステロイドを長期に内服されている方にも発症しやすくなります。長期臥床、運動不足、栄養不足も原因となり、若い方でも過度なダイエットでなり得ます。若い時から骨を丈夫に保つことが大事でもあり、全世代の方が対象となり、生涯に渡り骨粗鬆症の予防、管理は必要となります。
 診断方法はDEXA(2重エネルギーX線吸収法)、超音波法、MD法などで行いますが、通常はDEXA法(腰椎、大腿骨)で診断、治療の経過観察をすることが好ましいと考えられます。ただ、軽微な外傷による大腿骨近位部骨折、脊椎圧迫骨折の既往がある方もそれだけで骨粗鬆症と診断します。
 予防も非常に大切です。予防法として、転倒に注意する(骨折予防ですが)、カルシウムを十分に摂る、ビタミンD、ビタミンK、リン、マグネシウムを摂る、適量のタンパク質を取る、禁煙し、アルコールを控えめにする、運動、日光浴をする、などの対策が必要です。日本人は一般的に全世代でカルシウムの摂取量が少ないとは言われていますので意識して食生活を改善することが必要です。
 この数年、新型コロナウイルス感染症予防の為に、3密を防止と家に閉じこもる方が見受けられます。そのせいか定期の骨粗鬆症の検査を行うと骨量が低下していく方がいます。感染対策も大事ですが、引き籠り過ぎずに適度に外出し、運動し、日光を浴びることも大事です。
 治療は内服薬、注射などを行いますが、骨折した場合は必要に応じて手術も含めた治療します。治療は休薬することもありますが、継続が必要です。
 薬剤として、大きく分けると骨吸収抑制剤、骨形成促進剤があります。これが骨粗鬆症と診断された全ての方にベストという治療は無く、それぞれの方に随時適したオーダーメイドの治療が必要となります。整形外科を中心に治療を行っていますので十分な説明を受けた上で治療を受けることが必要です。近隣のかかりつけ医にご相談ください。
 骨粗鬆症と診断されていない方の定期的な検診も早期発見の為に必要です。市の検診事業もやっていますのでしっかり利用してください。