知っておきたい病気
2020年5月 過活動膀胱について
厚南セントヒル病院
金岡 源浩
「急におしっこに行きたくなる」「トイレに間に合わず漏れてしまう」などの症状で困ったことはありませんか?それは過活動膀胱の可能性が高いです。過活動膀胱とは急に我慢ができなくなるほどの尿意を感じて(尿意切迫)、結果的に頻尿や尿漏れを起こしてしまう疾患です。男女にそれぞれ特徴があり、男性は前立腺肥大症、女性は出産や加齢に伴う骨盤底筋の低下が原因となることがあります。
【疫学】
一般的に高齢者に多いとされ、全体の有症状率は約12.4%と言われていますが、70歳以上に限定すると4人に1人以上は症状を有していることが知られています
【発症メカニズム】
未だ十分に解明されていませんが、脳梗塞などの脳血管疾患や加齢による老化現象などが主原因でして挙げられます
【診断】
診断には過活動膀胱症状スコア(OABSS)という質問票を用いて自覚症状を評価します。「朝起きた時から寝る時までに、何回くらい尿をしましたか?」「夜寝てから朝起きるまでに、何回くらい尿をするために起きましたか?」「急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがありましたか?」「急に尿がしたくなり、我慢できずに尿をもらすことがありましたか?」の4つの項目をスコア化し、軽症:5点以下、中等症:6~11点、重症:12点以上(15点満点)に分類します。その他排尿に関連した症状を呈する膀胱炎や尿路結石など、他疾患が除外された場合に過活動膀胱と診断します。
【治療】
薬を使わない行動療法と、主に内服薬を始めとした薬物療法に分けられます
・行動療法
- 生活指導:過剰な水分摂取を控える、外出時には少し早めにトイレに行く
- 膀胱訓練:少しずつ排尿間隔を延長することにより膀胱容量を増加させる
- 骨盤底筋体操(女性):骨盤の底にある筋肉を鍛える体操
・薬物治療
- 抗コリン剤:膀胱の収縮に関与するムスカリン受容体に作用し、膀胱の異常収縮を抑制する.。主な副作用として便秘、口渇、排尿困難などがあり、緑内障の一部では使用できない
- β3刺激薬:β3アドレナリン受容体に作用し、膀胱を弛緩させることで蓄尿機能を改善する。主な副作用として動悸、腹部不快感などがあり、抗コリン剤に比較し排尿困難の頻度は低い
・その他の治療
- ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法:A型ボツリヌス毒素を膀胱壁内に注射することで筋弛緩作用を示す。薬物治療で難治性症例に対し一定の効果を認める
- 電気刺激療法:干渉低周波療法や仙骨神経刺激療法などがある
頻尿や尿漏れといった排尿症状は羞恥心より受診を敬遠されるケースが非常に多いです。しかし生活の質に直接影響を与えることが多い疾患であり、治療してすごく楽になったと言われることもまた非常に多いです。おしっこでお悩みの方はぜひ一度泌尿器科を受診してみて下さい。